マイクロ流体デバイスを用いて大脳オルガノイドの血管新生因子を特定 ~血管床を活用したMicrophysiological systems (MPS)~

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2024-01-30 京都大学

マイクロ流体デバイスを用いて大脳オルガノイドの血管新生因子を特定 ~血管床を活用したMicrophysiological systems (MPS)~

マイクロエンジニアリング専攻 横川隆司教授、Stanislav L. Karsten特定准教授らの研究グループは、関西医科大学医学部iPS・幹細胞応用医学講座 六車恵子教授らと共同で、血管床を有する生体模倣システム(Microphysiological systems (MPS))にヒトiPS細胞由来の大脳オルガノイドを導入し、その血管化に必要な因子を特定する技術を開発しました。
幹細胞由来の大脳オルガノイドは、脳の発生過程の理解や疾患モデルへの活用が期待されているものの、機能的な血管系を持たないため長期培養が可能な試験管内モデルが実現できていません。これまでに、オルガノイドを血管化する試みは報告されているものの、機能的な血管網の発達につながる完全な血管化は、マウスへの移植によってしか達成されていません。従って、ヒト脳の発達を模倣できるオルガノイド技術を確立するためには、神経―血管相互作用の理解に基づく血管化メカニズムを理解することが不可欠です。本研究では、マイクロ流体デバイス、オルガノイド、トランスクリプトミクスを組み合わせた学際的アプローチにより、ヒトiPS細胞由来の大脳オルガノイドに対し血管新生を促進する因子を同定しました。さらに、これらの因子によりMPS内の血管床からオルガノイドへの血管新生が促進されることを実証しました。
生体内で起こる血管化をMPSで再現することにより、大脳オルガノイドの発生とその血管化を実時間で観察しながら長期培養することができるため、動物実験の低減に貢献します。今後は、同様のアプローチによる血管化を様々なオルガノイドに適用することで、ヒト臓器の発生を理解する基礎研究や薬剤のスクリーニングツールとして活用し、社会に貢献していくことが期待されます。
本研究成果は2024年1月29日に国際学術誌「Lab on a Chip」のオンライン版に掲載されました。

研究詳細

マイクロ流体デバイスを用いて大脳オルガノイドの血管新生因子を特定 ~血管床を活用したMicrophysiological systems (MPS)~

研究者情報

横川 隆司

書誌情報

タイトル
Deciphering potential vascularization factors of on-chip co-cultured hiPSC-derived cerebral organoids

著者
Maneesha Shaji, 玉田篤史, 藤本和也, 六車恵子*, Stanislav L. Karsten*, 横川隆司*
* 責任著者

掲載誌
Lab on a Chip

DOI
10.1039/D3LC00930K

生物工学一般
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