ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドを用いた近位尿細管モデルを開発~薬物輸送体の機能解析と腎毒性評価のためのMicrophysiological systems (MPS)~

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2024-08-28 京都大学

ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドを用いた近位尿細管モデルを開発~薬物輸送体の機能解析と腎毒性評価のためのMicrophysiological systems (MPS)~

マイクロエンジニアリング専攻の横川隆司教授、Cheng Ma博士後期課程学生らの研究グループは、iPS細胞研究所荒岡利和特命助教、理化学研究所の髙里実チームリーダー、立命館大学の根来亮介助教らと共同で、ヒトiPS細胞由来の腎臓オルガノイドを使用して、近位尿細管オンチップモデル(Organoid-based Proximal Tubule-on-a-Chip, OPTC)を開発しました。このモデルは、薬物輸送体(トランスポーター)の機能評価や腎毒性試験において、従来のシステムを大きく上回る精度を実現しており、腎疾患研究や個別化医療の分野での応用が期待されます。

腎トランスポーターは、潜在的な薬物相互作用を予測する上で重要な役割を担っていますが、現在のin vitroモデルでは特に有機アニオントランスポーター(OAT1/3)、有機カチオントランスポーター2(OCT2)などを適切に発現していないことがほとんどです。そこで、本研究ではヒト腎組織を模倣したヒトiPS細胞由来の腎臓オルガノイドを作製し、オルガノイド由来の細胞を用いた近位尿細管オンチップモデル(OPTC)を開発しました。不死化細胞を用いた場合と比較して、OPTCはOAT1/3とOCT2をより高く発現しており、細胞極性もより強く示すことが分かりました。その結果、薬剤排泄と取り込みの評価、および腎毒性評価においても従来のモデルよりも高機能であり、さらに阻害剤を添加することによりトランスポーターの機能が低下することも実証できました。これらの結果は、OPTCが薬物輸送と腎毒性における腎トランスポーターの機能を評価できることを裏付けており、今後の疾患モデル作製を通して個別化モデルに道を開くものです。

本研究成果は2024年8月18日に国際学術誌「iScience」のオンライン版に掲載されました。

研究詳細

ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドを用いた近位尿細管モデルを開発~薬物輸送体の機能解析と腎毒性評価のためのMicrophysiological systems (MPS)~

研究者情報

横川 隆司
荒岡 利和

書誌情報

タイトル
Efficient Proximal Tubule-on-Chip Model from hiPSC-Derived Kidney Organoids for Functional Analysis of Renal Transporters

著者
Cheng Ma (馬成)、 Ramin Banan Sadeghian、根来亮介、藤本和也、荒岡利和、石黒直樹、髙里実、横川隆司*

掲載誌 iScience

DOI https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.110760

生物工学一般
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