2024-08-28 京都大学
植物の概日リズムについての私たちの知見の多くは、光や温度などの入力を厳密に制御できる実験室での実験結果に基づいています。この生物学的なタイミングを決めるメカニズムが、より予測不可能な自然界でどのように機能しているかについては、あまり知られていません。
西尾治幾 生態学研究センター連携助教(兼:滋賀大学助教)、工藤洋 同教授、Antony Dodd 英国ジョン・イネス・センター(John Innes Centre)教授、Dora Cano-Ramirez 英国セインズベリー研究所(Sainsbury Laboratory)博士らの国際共同研究グループは、一連の先駆的な野外実験によって、植物が自然変動環境下で生物時計と環境情報をどのように組み合わせて遺伝子の働きを調節しているかを示しました。本研究は実験室と自然環境の間のギャップを埋める一助となります。
本研究成果は、2024年8月22日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「あらゆる生物は、それぞれの自然生育地の中で進化してきました。自然条件下で遺伝子機能を評価するためには、多くの課題が残されています。本研究は、そのような試みの始まりの一つです。」(工藤洋)
「ベイズ時系列モデルの柔軟性により、自然環境における複雑なシグナル統合を解き明かすことができました。本研究で用いたアプローチは、特に複雑な環境で行われる研究において非常に効果的であると考えられます。」(西尾治幾)
「私たちの研究は、学際的な科学の進歩における国際協力の重要性を強調しています。実験室で特定したプロセスが自然条件下でも植物に影響を与えている様子を見るのは非常に興味深いです。私たちは、この研究が野外で生育する植物において、概日時計のシグナル伝達経路全体をモデル化した初めての例だと考えています。(Antony Dodd)
「概日時計は、多くの重要な植物プロセスを調整することが、実験室での研究から示されていますが、これらのプロセスがフィールド条件下でどの程度実現されているかは、これまで不明でした。」(Dora L. Cano-Ramirez)
詳しい研究内容について
研究者情報
研究者名:西尾 治幾
研究者名:工藤 洋