新規修飾siRNAによるオフターゲット効果の抑制 ~遺伝性疾患治療に副作用の少ないsiRNA医薬を開発~

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2024-09-05 名古屋大学

新規修飾siRNAによるオフターゲット効果の抑制 ~遺伝性疾患治療に副作用の少ないsiRNA医薬を開発~

名古屋大学大学院理学研究科の阿部 洋 教授 (糖鎖生命コア研究所 統合生命医科学糖鎖研究センター分子生理・動態部門 教授)、野村 浩平 博士後期課程学生らの研究グループは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の安 成鎮 博士後期課程学生、 東京大学大学院理学系研究科・新領域創成科学研究科(兼担)の程 久美子 准教授(研究当時、現:特任研究員)との共同研究で、新しい分子構造である2’-ホルムアミド修飾核酸を考案し、副作用のないsiRNA医薬を開発しました。
siRNAは、深刻な遺伝性疾患であるATTRアミロイドーシスや高コレステロール血症などに対する治療に用いられています。しかし、望まないところへ作用して副作用を起こすこと(オフターゲット効果)が懸念されています。本研究では、新たに開発した2′-ホルムアミド修飾核酸をsiRNAに導入することで、オフターゲット効果を抑制することに成功しました。
この成果は、さまざまな疾患に対するsiRNA医薬に適用することができ、副作用の少ない安心安全な国産siRNA医薬品としての利用が期待されます。
本研究成果は、2024年9月5日午前9時01分(日本時間)付オックスフォード大学出版局が発行する雑誌『Nucleic Acids Research』に掲載されます。

【ポイント】

・核酸の糖部2’位注1)へのホルムアミド修飾注2)を導入した核酸誘導体を開発した。
・本修飾をsiRNA注3)に導入することで、標的に対する活性を損なわず、オフターゲット効果注4)のみを抑制した。
・siRNA医薬へ応用することで、副作用の抑制が期待される。

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

【用語説明】

注1)核酸の糖部2’位:
核酸の糖骨格は1つの酸素原子と4つの炭素原子からなり、炭素原子には順に1’、2’、…というように番号が振られる。2’位は酸素原子から2つ離れた位置にあり、核酸塩基が結合した炭素の1つ隣の炭素原子を指す。

注2)ホルムアミド修飾:
-NHCHOと表され、最も簡単な組成のアミド構造である。

注3) siRNA:
small interfering RNAの略。21塩基程度からなる二本鎖のRNA。Argonauteタンパク質との複合体を形成し、相補的な配列を持つmRNAを切断することで、タンパク質発現を抑制する。

注4)オフターゲット効果:
本来の標的(オンターゲット)とは異なる、非標的の分子に作用してしまう効果。

【論文情報】

雑誌名: Nucleic Acids Research
論文タイトル: Synthesis of 2′-formamidonucleoside phosphoramidites for suppressing the seed-based off-target effects of siRNAs
著者: 野村浩平(名古屋大学), 安成鎮(東京大学), 小林芳明(東京大学), 近藤次郎(上智大学), Ting Shi(名古屋大学), 村瀬裕貴(名古屋大学), 中本航介(名古屋大学), 木村康明(名古屋大学), 阿部奈保子(名古屋大学), 程久美子(東京大学), 阿部洋(名古屋大学)* (*は責任著者)
DOI: 10.1093/nar/gkae741

【研究代表者】

大学院理学研究科 阿部 洋 教授

医療・健康
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