霊長類大脳新皮質へのウイルス注入手術の自動化に成功~50μmの精密さで血管網の隙間を突く~

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2024-09-10 東京大学

発表のポイント

  • 大脳新皮質へのウイルス注入手術の自動化を誤差50μm、出血確率0.1%というこれまでにない精度で実現し、霊長類コモンマーモセットで200箇所以上の自動ウイルス注入に成功しました。
  • ウイルス注入という脳への侵襲的手術を、AI技術とロボット技術を統合したシステムで計画から実行まで自律的に行った世界初の報告です。
  • 本成果は、ヒトを含む霊長類における大脳新皮質の高次機能の解明に寄与すると共に、医療分野の自動化の発展にも繋がることが期待されます。

霊長類大脳新皮質へのウイルス注入手術の自動化に成功~50μmの精密さで血管網の隙間を突く~

概要

東京大学大学院医学系研究科の野村晋ノ介大学院生(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員研究員)、寺田晋一郎助教、松崎政紀教授(理化学研究所脳神経科学研究センター脳機能動態学連携研究チーム チームリーダー、東京大学大学院理学系研究科教授 兼担)、同志社大学大学院脳科学研究科 正水芳人教授、東京大学大学院医学系研究科 大木研一教授らによる研究グループは、従来用いられてきた脳へ直接ウイルスを多点注入する手法を自動化するシステム「ARViS(Automated Robotic Virus injection System)」を開発しました。

霊長類の脳において、運動、認知、感覚処理といった高次機能に関する広範な神経活動を捉えることは、ヒトの脳機能を理解する上で極めて重要です。しかし、神経活動を計測するセンサー遺伝子を非ヒト霊長類大脳新皮質の広範囲に導入することは熟練した実験者の多大なる労力を必要とするため、これを効率化、自動化するための技術開発が求められていました。今回開発したシステムは、AIによる画像認識技術(注1)を用いて脳表面の血管を検出し、ロボット制御によって注射器を正確に挿入することを可能にしています。マウスでの実証実験では、出血率0.1%、誤差50μm以下という安全で高精度な介入を実現しました。この技術を霊長類コモンマーモセット(注2)に適用し、大脳新皮質7×14mm2の広域にカルシウムセンサー(注3)を均一に発現させ、複数の脳領域をまたいだ神経ダイナミクスを計測することに成功しました。ARViSによって、非ヒト霊長類の大脳新皮質広域への遺伝子導入が効率的に行えることが証明され、今後の神経科学研究や医療用ロボット操作の自動化に大きく貢献することが期待されます。

詳しい資料は≫

生物工学一般
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