細胞シートを3次元に折れたたむ仕組み発見~接着素材の構築・解体が正確な生体組織の「折り紙」を実現~

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2023-09-04 京都大学

坪井有寿 生命科学研究科特定助教、近藤武史 同特定講師 (現:理化学研究所チームリーダー)、藤本仰一 大阪大学准教授 (現:広島大学教授)らの研究グループは、細胞シートを取り囲む接着性素材 (細胞外マトリックス)によって、「折り紙」のように細胞シートを3次元に折りたたむ仕組みを発見しました。

生き物が規則的な形を生み出す仕組みは、未解明の重要な問題です。先行研究では、組織を構成する個々の細胞が協調して変形や移動を行うことで、組織の形状が変わることが示されています。しかし、多細胞生物では、細胞は孤立して存在することはなく、常に周囲の構造物により囲まれた状態で組織の形づくりが進みます。したがって、形作りの仕組みを理解する上で、周囲の構造物による空間的な制約の影響を明らかにすることが重要ですが、この点に関する知見はまだ乏しい状態です。

本研究グループは、ショウジョウバエの規則的な翅組織の折れたたみに着目し、組織と周辺構造物であるクチクラをつなぎとめる細胞外マトリックス Dumpyから構成される繊維素材の“構築”と“解体”が、規則的な形作りの鍵となることを発見しました。本研究成果は、細胞外マトリックスを介した組織と周辺構造物のダイナミックな相互作用が、3次元の規則的な組織の形を自在に制御することを示しており、器官の発生・再生に関わる生命科学・工学・医学などの分野において重要な知見となることが期待されます。

本研究成果は、2023年9月1日に、国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

接着素材Dumpyにより細胞シートが規則的に折れたたまれる仕組み
接着素材Dumpyにより細胞シートが規則的に折れたたまれる仕組み

研究者のコメント

「ショウジョウバエのみならず、蝉やトンボなど様々な昆虫において、羽化前の翅は小さく折れたたまれています。羽化後に翅が広がる様子を観察すると、大きな翅がこんなにも小さなスペースによく収納されていたなと驚かされます。私は研究室の同僚が趣味で羽化させていた蝉を観察したことから、この研究の構想を思いつきました。研究をスタートさせた当初は、新しい形づくりの仕組みが見つかるとは思いもよりませんでしたが、純粋な興味から始めたからこそ、想定外の発見につながるものなのだと感慨深く思っております。ぜひこの夏、とても神秘的な昆虫の羽化 (特に翅)を観察してください。」(坪井有寿)

詳しい研究内容について

細胞シートを3次元に折れたたむ仕組み発見―接着素材の構築・解体が正確な生体組織の「折り紙」を実現―

研究者情報

研究者名:坪井 有寿

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.adh2154

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/284920

【書誌情報】
Alice Tsuboi, Koichi Fujimoto, Takefumi Kondo (2023). Spatiotemporal remodeling of extracellular matrix orients epithelial sheet folding. Science Advances, 9(35):eadh2154.

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