雌雄同体生物が進化したメカニズムに迫る~タンパク質にならない非コード領域の「急速な進化」が関与~

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2024-09-17 東北大学

生命科学研究科 教授 牧野能士
生命科学研究科 教授 杉本亜砂子

【発表のポイント】

  • モデル生物である線虫の仲間では、個体がオスとメスの両方の機能を持つ雌雄同体が複数の種で進化していますが、その進化学的なメカニズムはよくわかっていませんでした。
  • ゲノム中のタンパク質にならない配列(非コード領域)を網羅的に解析し、雌雄同体種では性に関わる遺伝子の近傍で加速的な進化が生じていることを解明しました。
  • 雌雄同体の非コード領域を雌雄異体種の塩基配列と入れ替えることで、精子形成に関わる遺伝子の発現量を減少させることに成功しました。

【概要】

多くの動物はオスとメスのどちらかの機能のみをもつ雌雄異体ですが、精子と卵の両方を作ることができる雌雄同体の種も存在します。雌雄異体から雌雄同体への進化は様々な生物種で起こっていますが、その進化メカニズムは分かっていません。

東北大学大学院生命科学研究科の玉川克典研究員(現 東京大学大気海洋研究所海洋生命システム研究系海洋生命科学部門特任研究員)、牧野能士教授、杉本亜砂子教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の菊地泰生教授をはじめとする研究グループは、複数の種で雌雄同体が進化してきた線虫の仲間を対象として、雌雄同体の進化に伴い急速に進化したゲノム中の非コード保存領域(CNE)(注1)を網羅的に特定しました。さらに、雌雄同体のCNEを雌雄異体の種と入れ替えることで、精子の形成に関わる遺伝子の発現を変化させることに成功しました。

本研究成果は、雌雄同体現象の進化メカニズムや非コード領域が進化に与える影響の解明につながると期待されます。本成果は 2024年9月13日(米国東部時間)に学術誌Science Advancesに掲載されました。

雌雄同体生物が進化したメカニズムに迫る~タンパク質にならない非コード領域の「急速な進化」が関与~
図1. ゲノム解析に使用した種とその繁殖様式 Caenorhabditis属の線虫では雌雄同体の種が独立に3度出現している。多くの種はオスとメスによる繁殖を行うが、雌雄同体種ではほぼ全ての個体が雌雄同体として成長する。雌雄同体の種は幼虫期に精子を形成するが、雌雄異体の種は精子を作らず雌として発達する。

【用語解説】

注1. 非コード保存領域(CNE)
種を越えて高度に保存されているゲノム中の非コード領域のこと。機能はわかっていない点も多いが、遺伝子発現の制御などに関わることが報告されている。Conserved Non-coding Element(CNE)またはConserved Non-coding Sequence(CNS)とも呼ばれる。

【論文情報】

タイトル:Evolutionary changes of non-coding elements associated with transition of sexual mode in Caenorhabditis nematodes
著者: Katsunori Tamagawa*, Mehmet Dayi, Simo Sun, Rikako Hata, Taisei Kikuchi, Nami Haruta, Asako Sugimoto*, Takashi Makino*
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 研究員 玉川克典(現 東京大学大気海洋研究所海洋生命システム研究系海洋生命科学部門 特任研究員)、教授 杉本亜砂子、教授 牧野能士
掲載誌:Science Advances
DOI:10.1126/sciadv.adn9913

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 杉本亜砂子

東北大学大学院生命科学研究科
教授 牧野能士

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか

細胞遺伝子工学
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