表面張力が損傷ミトコンドリアのオートファジーを促進する~オートファジーアダプターの相分離によるシート状液滴の意義~

ad

2024-10-23 東京大学

発表のポイント

  • 損傷ミトコンドリア上に集まるオートファジーアダプタータンパク質は液-液相分離を起こし、シート状液滴としてミトコンドリアを覆うことを明らかにしました。
  • このシート状液滴が生み出す表面張力によりオートファジー関連膜構造がミトコンドリア上に係留され、それがミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)を促進することを示しました。
  • シート状液滴がミトコンドリアを包むという今回の発見は、ミトコンドリア以外のオルガネラ(細胞小器官)の分解や、オルガネラ同士の接触などのさまざまな細胞内の現象にも当てはまる可能性が期待されます。

表面張力が損傷ミトコンドリアのオートファジーを促進する~オートファジーアダプターの相分離によるシート状液滴の意義~

概要

東京大学大学院医学系研究科の水島昇教授らの研究グループは、品質の低下したミトコンドリアを選択的にオートファジー分解するメカニズムであるマイトファジー(注1)に重要な新しい仕組みを解明しました。損傷を受けたミトコンドリアは細胞に障害を与えうるので、そのような不良ミトコンドリアはParkinというユビキチンリガーゼ(注2)によってユビキチン化され、マイトファジーで分解されます。その過程では、オートファジーアダプタータンパク質(注3)がユビキチン化されたミトコンドリア上に集積することが知られます。また、一般にアダプタータンパク質はサイトゾルで相分離(注4)を起こして液滴を形成する性質がありますが、マイトファジー誘導時にミトコンドリア上に集積したアダプタータンパク質が液滴を形成するかは不明でした。今回の研究により、損傷したミトコンドリア上に集積したアダプタータンパク質(OPTNやNDP52など)がミトコンドリア表面で相分離を起こし、ミトコンドリアを包むシート状の液滴を形成することが明らかになりました。さらに、この液滴の形成を阻害すると、オートファゴソームのもととなる ATG9 小胞がミトコンドリアへ局在しなくなり、マイトファジーが起きなくなることが観察されました。このことから、アダプタータンパク質がシート状液滴を形成し、それによる表面張力(濡れ効果)(注5)によってATG9小胞やオートファゴソーム膜が係留され、マイトファジーが進行することが示唆されました。本研究成果は、膜構造上に形成するシート状液滴が異なるオルガネラ間の接触を仲介するという新しい概念を提唱するものであり、他の細胞内構造にも当てはまることが期待されます。本研究成果は、10月17日に国際科学誌「The EMBO Journal」オンライン版に掲載されました。

詳しい資料は≫

医療・健康
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました