2024-11-08 京都大学
澤田脩那 理学研究科修士課程学生(研究当時)、佐藤拓哉 生態学研究センター准教授、佐藤臨 東京都立大学特任研究員、大澤剛士 同准教授、故・松本和馬 森林総合研究所博士、Ming-Chung Chiu 国立台湾大学助教、岡田龍一 神戸大学研究員、佐倉緑 同准教授からなる国際研究グループは、ハリガネムシに行動操作されたカマキリが、水平偏光を多く含む光を反射するアスファルト道路に引き寄せられ、その多くがハリガネムシとともに斃死している可能性を示しました。本研究成果は、生物多様性喪失の原因の一つである「進化的トラップ」が、宿主の環境応答を介して共生生物にも生じることを示す世界でも初めての研究成果です。
本研究成果は、2024年10月15日に、国際学雑誌「PNAS Nexus」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「ハリガネムシに感染したハラビロカマキリがサンプリングできる期間は一年の中でも限られており、その期間内に複数の行動実験を実施せねばならず、大変苦労しました。一方で、感染カマキリが水平偏光に誘引されている様子や偏光度の高いアスファルト道路上を歩いている様子を直に観察でき、思った通りだ!と非常に楽しみながら研究を実施できました。」(澤田侑那)
「ハリガネムシに感染したカマキリが自ら水に飛び込む現象は、生物学的にも興味深い行動操作の例です。その仕組みを紐解く中で、なぜ感染カマキリがアスファルト道路を歩くのか?という素朴な疑問に仮説を与え、検証することができました。我々には見えない光の性質にも目を向けることで、蟲を無視しない環境整備の方法が見つかるかもしれません。」(佐藤拓哉)
詳しい研究内容について
寄生虫の「延長された表現型」に対する進化的トラップの可能性―ハリガネムシ類に感染したカマキリは水平偏光に引き寄せられて道路を歩く―
研究者情報
研究者名:佐藤 拓哉