低親和性EGFRリガンドが長距離シグナル伝達分子であることを発見~くっつきにくい方が遠くまで到達できる~

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2024-11-20 京都大学

増殖因子は、細胞の増殖や分化を促進するタンパク質の総称であり、細胞表面の受容体に結合することで多様な生体機能を制御します。しかし、我々の体には似た性質を持つ複数の増殖因子が存在するものの、それぞれの機能や複数の増殖因子が必要な理由については十分に解明されていませんでした。

松田道行 医学研究科客員教授、出口英梨子 同博士課程学生、寺井健太 同准教授(現:徳島大学教授)らの研究グループは、蛍光顕微鏡技術を用いて上皮成長因子受容体(EGFR)リガンドファミリーを解析しました。その結果、受容体への結合能の低いリガンドがより速く遠くの細胞を活性化できることを発見しました。この発見により、低親和性リガンドが皮膚創傷部位の細胞遊走を誘導し、シグナルを遠方に伝達することで傷の修復を促進していることが明らかになりました。

本研究により、一見似た性質を持つ増殖因子の個別の特性と、生体内における新たな機能を明らかにしました。本研究で得られた知見は、細胞間コミュニケーションの理解や皮膚疾患の治療法開発などの幅広い分野への応用が期待されます。

本研究成果は、2024年11月14日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

低親和性EGFRリガンドが長距離シグナル伝達分子であることを発見~くっつきにくい方が遠くまで到達できる~本研究の概要図:低親和性EGFRリガンドは皮膚創傷部位の細胞を遊走させるシグナルをより遠くまで伝え、傷の修復を促している。

研究者のコメント

「本研究では複数あるEGFRリガンドの細胞外の動きを定量的に解析し、その1つであるEREGが皮膚創傷治癒に機能していることを発見できました。しかし、EGFRリガンドの分泌量は組織や細胞によって異なるため、皮膚以外の場所では、どのリガンドがどのように働いているのか、まだ分かっていません。EGFRリガンドを介した細胞間コミュニケーションの全体像を、今後の研究でさらに明らかにしていきたいと考えています。」(出口英梨子)

詳しい研究内容について

低親和性EGFRリガンドが長距離シグナル伝達分子であることを発見―くっつきにくい方が遠くまで到達できる―

研究者情報

研究者名:松田 道行
研究者名:寺井 健太

医療・健康
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