2024-12-24 京都大学
三谷曜子 野生動物研究センター教授、櫻木雄太 北海道大学博士課程学生(現:同学術研究員)、Rosing-Asvid Aqqalu グリーンランド天然資源研究所博士、杉山慎 北海道大学教授らの研究グループは、グリーンランドのフィヨルドに生息するアザラシは氷河や餌生物に関係する特徴的な水塊を利用していたことを解明しました。
地域住民がアザラシを利用して暮らすグリーンランドでは、近年の急速な氷河の融解が海洋生態系に影響を及ぼすことが危惧されています。この影響を予測するためには、生息する種の分布と利用環境を特定する必要があります。そこで、ワモンアザラシに海洋環境を計測できる衛星発信器を装着し、本種の利用環境を調べました。その結果、夏は氷河付近を利用し、冬は定着氷形成とともにフィヨルド外の浅い海域に移動していました。また、夏は餌であるホッキョクダラが生息すると考えられる水塊まで潜っていたこともわかりました。本研究により、グリーンランドにおける氷河変動と海洋生態系の相互作用関係への理解が期待されます。
本研究成果は、2024年11月30日に、国際学術誌「Polar Science」にオンライン掲載されました。
グリーンランド北西部チューレ地域におけるワモンアザラシの季節ごとの移動軌跡
研究者のコメント
「本研究では、グリーンランド北西部の氷河フィヨルドにおいて、ワモンアザラシの季節的な生息地利用に関する基礎的な知見を得ることができました。しかし、氷河フィヨルドの複雑な海洋生態系の構造を理解するためには、特に餌生物の分布などの生物学的な環境の情報が不十分です。今後、環境DNAなど幅広い手法を用いて情報を取得し、氷河フィヨルドにおける氷河と海洋生態系の相互作用関係への理解を深めていく必要があると考えています。」(櫻木雄太)
詳しい研究内容について
氷河フィヨルドでアザラシの利用環境を解明―グリーンランドにおける氷河とアザラシの関係―
研究者情報
研究者名:三谷 曜子