2024-12-27 京都大学
血液透析患者は、一般集団と比較してがんの発症率が高く、死亡原因の約10%を占めています。一方で、がんを発症した血液透析患者の治療や予後についての知見は乏しく、その診断・治療・予後についての疫学研究が必要でした。
柳田素子 医学研究科教授(兼:高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)主任研究者)、鳥生直哉 ASHBi特定研究員らの研究グループは、国内のがん拠点病院20施設との多施設共同研究を実施し、502人の血液透析がん患者の臨床データについて、がんの診断・治療・長期予後について解析しました。その結果、血液透析がん患者の3年生存率は70%と、一般的な透析患者(同73%)と比較しても同等であり、また一般がん患者と比較しても同等でした。特に、手術療法が実施された患者群では、生存期間が長く(同83%)、死亡原因は、がん関連よりも感染症や心不全など非がん関連死亡が多いことが示されました(80%)。本研究は、十分な検討がされてこなかった透析がん患者の治療や予後に関する臨床疫学的知見を大規模多施設共同研究で明らかにし、診療の向上やアウトカム改善に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2024年12月20日に、国際学術誌「Clinical Kidney Journal」にオンライン掲載されました。
本研究成果の概要
研究者のコメント
「血液透析患者のがん診療については十分な検討がされてきませんでしたが、本研究では大規模多施設共同研究で透析がん患者の治療や予後に関する臨床疫学的知見を明らかにすることができました。今後、免疫療法や術前・術後の補助療法が透析がん患者に及ぼす影響が明らかとなり、透析がん患者の治療戦略が最適化され、生命予後がよりよくなることを期待しております。」(鳥生直哉)
詳しい研究内容について
血液透析導入後のがんの診断と予後―多施設共同J-CANDY研究―
研究者情報
研究者名:柳田 素子
研究者名:鳥生 直哉