2025-01-24 京都大学
菅瀬謙治 農学研究科教授、植田充美 成長戦略本部研究員、青木航 大阪大学教授らの研究グループは、遺伝子を出発物質としてリボソームを合成するプロセス(リボソーム生合成)を試験管内で再構成することに世界で初めて成功しました。
リボソームとは、20種類のアミノ酸を遺伝コードに従ってつなげることでペプチド・タンパク質を合成する分子機械です。もしリボソームを改変できれば、多様な非天然ペプチド・タンパク質を合成可能になるため、優れた医薬や産業用酵素の創出が可能になると期待されています。しかし、リボソームは生命の必須因子であるため、これを改変しようとすると細胞にとって有害な影響(細胞毒性)が発生します。そのため、リボソームの改変は困難でした。
本研究グループが開発した試験管内リボソーム生合成は、遺伝子を出発物質として試験管内でリボソームを合成できます。そのため、細胞毒性を考慮する必要なく、原理的にはあらゆる変異をリボソームに導入できると考えられます。
本技術を応用することで、多様な非天然ペプチド・タンパク質を効率的に重合できる人工リボソームを創出できるようになると期待されます。
本研究成果は、2025年1月8日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
試験管内リボソーム生合成
研究者のコメント
「本研究では、最も複雑な生物学的システムのひとつである『リボソーム生合成』を試験管内で再構成することに成功しました。この試験管内リボソーム生合成では、細胞毒性を考慮することなく、原理的にはあらゆる変異をリボソームに導入できると考えられます。将来的には、触媒活性を改変した人工リボソームを設計することで、さまざまな産業に資する非天然ペプチド・タンパク質が合成可能になると期待されます。」(青木航)
詳しい研究内容について
リボソーム生合成の試験管内再構成に成功―細胞内のタンパク質合成工場を試験管で再現―
研究者情報
研究者名:菅瀬 謙治
研究者名:植田 充美
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-025-55853-7
【書誌情報】
Yuishin Kosaka, Yumi Miyawaki, Megumi Mori, Shunsuke Aburaya, Chisato Nishizawa, Takeshi Chujo, Tatsuya Niwa, Takumi Miyazaki, Takashi Sugita, Mao Fukuyama, Hideki Taguchi, Kazuhito Tomizawa, Kenji Sugase, Mitsuyoshi Ueda, Wataru Aoki (2025). Autonomous ribosome biogenesis in vitro. Nature Communications, 16, 514.