人工知能(深層学習)により細胞内の特定たんぱく質の局在推定に成功

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関連するたんぱく質のみの画像から予測可能

たんぱく質同士の相関関係の解明に期待

2021-08-05 奈良先端科学技術大学院大学,科学技術振興機構

奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑 一裕) 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学研究室の末次 志郎 教授(データ駆動型サイエンス創造センター/デジタルグリーンイノベーションセンター兼務)の研究グループは、細胞の画像をもとに特定のたんぱく質が細胞内に局在している様子を調べる方法として、目的の2つのたんぱく質間に十分に機能的な相関関係がある場合、人工知能(深層学習 ディープラーニング)を用いることで、一方のたんぱく質からもう一方のたんぱく質の局在状況が予測できることを初めて明らかにしました。

細胞は周囲の環境に合わせて微細な構造を取り、それらの構造には特定のたんぱく質の局在が見られます。これまでも細胞画像に機械学習を用いることで細胞の構造情報を抽出し、解析する試みがなされてきましたが、細胞の状態の分類や、細胞膜・核のラベリングなどにとどまっており、細胞画像をもとに微細な構造の内部にあるたんぱく質分子の局在を予測するといった試みはなされてきませんでした。

本研究では、深層学習の一種であるU-netモデルや、2つのネットワークにより正否を判定する敵対的生成ネットワークGenerative adversarial network(GAN)をべースにしたpix2pixモデルに、たんぱく質の染色画像を学習させたところ、少なくとも機能的に関連のあるたんぱく質同士では、ある1種類のたんぱく質の染色画像から、他のたんぱく質の染色画像を生成することができました。これを通して、コンピューターの深層学習によりたんぱく質局在の推定が行えることを示しました。

1つのたんぱく質の局在から他のたんぱく質の局在を予測できるため、今後は細胞画像をもとに複数の他たんぱく質の局在が分かるようになり、また、未知のたんぱく質分子間の相関関係の解明などに役立てることができると考えています。

本研究成果は、2021年8月5日(中央ヨーロッパ時間)発行のスイス科学誌「Frontiers in Cell and Developmental Biology」のオンライン版で公開されます。

今回の研究は、奈良先端大 バイオサイエンス領域の重根 桂 大学院生(博士後期課程2年)、スファモン ジェンワンタナクン 大学院生(博士後期課程1年)、西村 珠子 助教、情報科学領域の佐藤 嘉伸 教授(データ駆動型サイエンス創造センター兼務)、日朝 裕太 助教、大竹 義人 准教授、スーフィーマーゼン 助教らと共同で行いました。

本研究成果は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST研究領域「計測技術と高度情報処理の融合によるインテリジェント計測・解析手法の開発と応用」(研究総括:雨宮 慶幸(高輝度光科学研究センター 理事長))における研究課題「高精度時空間計測による多元細胞情報統合」(研究代表者:清末 優子)、上原生命科学記念財団などの事業・研究領域・研究課題によって得られました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Translation of cellular protein localization using convolutional networks”
DOI:10.3389/fcell.2021.635231
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
末次 志郎(スエツグ シロウ)
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 分子医学細胞生物学研究室 教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
奈良先端科学技術大学院大学 企画総務課 渉外企画係
科学技術振興機構 広報課

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