抗うつ剤の投与量は承認範囲内でも低めが最適と判明

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用量反応メタアナリシスが示す効果と副作用の最適バランス

2019-06-20 京都大学

古川壽亮 医学研究科教授、Andrea Cipriani オックスフォード大学教授、Georgia Salanti ベルン大学准教授らの研究グループは、新規抗うつ剤の固定投与量を比較した77臨床試験(19,364人)のデータをもとに用量反応メタアナリシスを実施しました。
その結果、承認範囲の低めまでは投与量の増加に従って効果が増加するものの、それ以上投与しても効果は増えないかむしろ減少すること、副作用による脱落については投与量を増やせば急激に増加すること、したがって、承認範囲の低めで効果と副作用のバランスが最適となることを示しました。
うつ病は人類にとって疾病による苦悩の最大原因です。うつ病治療の柱の一つは抗うつ剤ですが、すべての抗うつ剤には承認された投与量の範囲がありその中でもどれくらいの量が至適投与量なのか、そもそも抗うつ剤には用量反応関係があるのか、今まで明らかにされていませんでした。
今後、うつ病治療ガイドラインに本研究成果が反映されることが期待されます。
本研究成果は、2019年6月7日に、国際学術誌「Lancet Psychiatry」のオンライン版に掲載されました。

図:抗うつ剤は、承認範囲内の低めで効果と副作用のバランスが最適となる

詳しい研究内容について

抗うつ剤の投与量は承認範囲内でも低めが最適と判明
―用量反応メタアナリシスが示す効果と副作用の最適バランス―

概要
うつ病は人類にとって疾病による苦悩の最大原因です。うつ病治療の柱の一つは抗うつ剤ですが、すべての 抗うつ剤には承認された投与量の範囲がありその中でもどれくらいの量が至適投与量なのか、そもそも抗うつ 剤には用量反応関係があるのか、良く分かっていませんでした。
そこで、京都大学大学院医学研究科 古川壽亮 教授 (臨床疫学)、オックスフォード大学 Andrea Cipriani 教 授 (精神医学)、ベルン大学 Georgia Salanti 准教授( 統計学)らのグループは、新規抗うつ剤の固定投与量 を比較した 77 臨床試験 19,364 人)のデータをもとに用量反応メタアナリシスを実施しました。その結果、 承認範囲の低めまでは投与量の増加に従って効果が増加するものの、それ以上投与しても効果は増えないかむ しろ減少すること、副作用による脱落については投与量を増やせば急激に増加すること、したがって、承認範 囲の低めで効果と副作用のバランスが最適となることを示しました。
日本、そして世界のうつ病治療ガイドラインは、今後はこの情報を反映することが期待されます。 本成果は、2019 年 6 月 7 日にイギリスの国際学術誌「 Lancet Psychiatry」のオンライン版に掲載されまし た。

図:抗うつ剤は、承認範囲の低めで効果と副作用のバランスが最適となる

1.背景
うつ病は人類にとって疾病による苦悩の最大原因です。うつ病治療の柱の一つは抗うつ剤ですが、すべての 抗うつ剤には承認された投与量の範囲がありその中でもどれくらいの量が至適投与量なのか、そもそも抗うつ 剤には用量反応関係があるのか、良く分かっていませんでした。

2.研究手法・成果
そこで、本研究グループは、新規抗うつ剤の固定投与量を比較した 77 臨床試験 (19,364 人)のデータをも とに用量反応メタアナリシスを実施しました。抗うつ剤の効果は、投与量 (フルオキセチンという日本では未 発売の抗うつ剤に換算しています。フルオキセチンの承認投与量は 20-80 mg/日です)が 20-40 mg 程度で ピークとなり、それ以上では平坦またはむしろ減少します。一方、副作用による脱落は、投与量が増加するに つれて、急速に増加します。効果と副作用の両者を反映する、全ての原因による脱落は、20-30mg 程度でも っとも低くなることが分かります。 (下図)
すなわち、承認範囲の低めまでは投与量の増加に従って効果が増加するものの、それ以上投与しても効果は 増えないかむしろ減少すること、副作用による脱落については投与量を増やせば急激に増加すること、したが って、承認範囲の低めで効果と副作用のバランスが最適となることを示しました。


3.波及効果、今後の予定

日本、そして世界のうつ病治療ガイドラインは、今後はこの情報を反映することが期待されます。

4.研究プロジェクトについて
本研究は、JSPS 科研費 (古川)、英国 National Institute for Health Research (Cipriani)、Swiss National Science Foundation (Salanti)の研究費によって実施されました。

<研究者のコメント>
うつ病治療における抗うつ剤の至適投与量という臨床疑問は、古川が精神科の研修医としてはじめて患者さ んを担当したときからの臨床疑問でした。これをこのようにして解決できたことを嬉しく思っています。

<論文タイトルと著者>
タイトル:Optimal dose of selective serotonin reuptake inhibitors, venlafaxine and mirtazapine in major depression: Systematic review and dose-response meta-analysis (大うつ病に対する選択的セロ トニン再取り込み阻害剤、ベンラファキシン、ミルタザピンの至適投与量:系統的レビューおよび 用量反応メタアナリシス)
著 者:Furukawa TA, Cipriani A, Cowen PJ, Leucht S, Egger M & Salanti G
掲 載 誌:Lancet Psychiatry
DOI:https://doi.org/10.1016/S2215-0366(19)30217-2

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