2019/7/8 ドイツ連邦共和国・カールスルーエ工科大学(KIT)
・ KIT が、温室効果ガスである二酸化炭素からグラフェンを直接合成する技術を開発。グラフェンの新たな製造方法として注目される可能性有り。
・ 石炭や石油などの化石燃料の燃焼は、電力や熱、モビリティのためのエネルギーを発生するが、同時に大気中の二酸化炭素も増加するため、地球温暖化につながる。この因果連鎖を断ち切るべく、代替エネルギーの研究が進められてきたが、ひとつの可能性として、二酸化炭素を安価な合成用原材料ととらえ、再利用可能なサイクルに戻す、という案がある。
・ 自然界の植物の葉の光合成プロセスでは、光、水、二酸化炭素の組み合わせがバイオマスを形成、自然な物質循環が成り立っており、金属酵素ベースの RuBisCo が空気中の二酸化炭素をとりこみ、植物の化学反応に有用な物質に変換。研究者たちは、自然界のこの金属酵素ベースの変換からヒントを得て、特別に調合した触媒活性を示す金属表面を用いて、摂氏 1,000 度以下の温度で、温室効果ガスである二酸化炭素と水素ガスをグラフェンに直接変換するプロセスを開発。
・ グラフェンは、独特な電気的性質をもつ化学元素である炭素の 2 次元構造体であり、次世代の電子部品に適した材料。その性質は 2004 年に多層に重なったグラファイト薄片の両面にテープを張り付け引きはがす手法でグラフェンを作製した Andre Geim 氏と Konstanin Novoselov 氏により発見され、両氏は 2010 年にノーベル物理学賞を受賞。・ 金属触媒の表面が銅とパラジウムの正確な比率を示すと、二酸化炭素のグラフェンへの直接変換は、シンプルなワンステッププロセスで可能とのこと。さらには、多層グラフェンの作製も実証済み。バッテリー、電子部品やフィルター材料などに適用できる可能性有り。
・ 今後の目標は、得られたグラフェンで、機能的な電子部品用を作製すること。グラフェンや磁性分子などの炭素材料は、従来の二次元論理に基づかない、超高速でエネルギー効率良く計算できる将来の量子コンピューターの構成要素となりうる。
URL: https://www.kit.edu/kit/english/pi_2019_090_producing-graphene-from-carbon-dioxide.php
(関連情報)
ChemSusChem 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Direct Conversion of CO2 to Multi‐Layer Graphene using Cu–Pd Alloys
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/cssc.201901404
<NEDO海外技術情報より>