開放隅角緑内障に関わる新たな7遺伝子領域を同定

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1万5,000人の緑内障患者のゲノム解析から病因の解明へ

22018-02-19 理化学研究所,日本医療研究開発機構,東北大学

要旨

理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、秋山雅人リサーチアソシエイト、志賀由己浩研究生、東北大学医学部眼科学分野の中澤徹教授、西口康二准教授らの共同研究グループ※は、日本人の主な失明原因である開放隅角(ぐうかく)緑内障についてアジア最大のゲノムワイド関連解析(GWAS)[1]を実施し、発症に関わる7カ所の感受性遺伝子領域を同定しました。

緑内障は視神経が障害を受ける眼疾患で、日本人の失明原因の第一位となっています。日本人における緑内障の有病率は5.0%であり注1)、その主な病型は開放隅角緑内障ですが、開放隅角緑内障患者の遺伝要因の大部分は解明されていませんでした。

今回、共同研究グループは、開放隅角緑内障の発症に関わる遺伝要因を明らかにするため、バイオバンク・ジャパン[2]で収集された日本人の開放隅角緑内障患者3,980名と対照群18,815名を対象に、ヒトゲノム全体に分布する約600万個の一塩基多型(SNP)[3]のGWASを行いました。さらに、開放隅角緑内障と強い関連が認められたSNPについて、独立した二つの日本人集団(患者:3,398名、対照群:17,570名)で再現性を検証しました。その結果、新たに7カ所の遺伝子領域(FNDC3B、ANKRD55-MAP3K1、LMX1B、LHPP、HMGA2、MEIS2、LOXL1)が発症に影響することが分かりました。また、これらの遺伝子領域について、他の人種(患者:8,357名、対照群:38,100名)における発症リスクへの影響を検証したところ、ニつのSNPがアジア系人種で、四つのSNPがヨーロッパ系人種でも発症に寄与していると考えられました。さらに、関連が示された遺伝子の特徴を明らかにするためパスウェイ解析[4]を行ったところ、上皮成長因子受容体シグナル[5]に関する遺伝子群が発症に影響している可能性を突き止めました。さらに、過去に開放隅角緑内障との関与が報告されている7形質について、遺伝学的相関[6]の評価を行いました。その結果、開放隅角緑内障は2型糖尿病や心血管病と遺伝的背景を共有していることが明らかになりました。これは、生まれつき開放隅角緑内障になりやすい人が、これらの疾患になりやすいことを示しています。

本成果は、今後、緑内障病因の解明や治療法の開発や予防医学研究に貢献すると期待できます。

本研究は、英国の科学雑誌『Human Molecular Genetics』掲載に先立ち、オンライン版(2月14日付け:日本時間2月14日)に掲載されました。

本研究は、日本医療研究開発機構の「オーダーメイド医療の実現プログラム」の支援のもと行われました。本研究で使用したサンプルは、バイオバンク・ジャパン、東北大学眼科を中心とした緑内障学会遺伝子研究班、京都大学眼科、九州大学眼科、日本多施設共同コホート研究(JMICC Study)[7]、多目的コホート研究(JPHC Study)[8]、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構および東北大学東北メディカル・メガバンク機構において収集されたものです。

注1)Iwase A et al. The prevalence of primary open-angle glaucoma in Japanese: the Tajimi Study. Ophthalmology, 2004.

※共同研究グループ

理化学研究所 統合生命医科学研究センター
副センター長 久保 充明 (くぼ みちあき)

統計解析研究チーム
チームリーダー 鎌谷 洋一郎 (かまたに よういちろう)
リサーチアソシエイト 秋山 雅人 (あきやま まさと)
研究生 志賀 由己浩 (しが ゆきひろ)(東北大学医学部 眼科学分野 非常勤講師)
客員主管研究員 高橋 篤 (たかはし あつし)(国立循環器病研究センター研究所 病態ゲノム医学部 部長)

基盤技術開発研究チーム
チームリーダー 桃沢 幸秀 (ももざわ ゆきひで)

東北大学医学部
眼科学分野
主任教授 中澤 徹 (なかざわ とおる)
助教 佐藤 孝太 (さとう こうた)

視覚先端医療学寄付講座
准教授 西口 康二 (にしぐち こうじ)

背景

緑内障は視神経が障害を受けることで視野が狭くなる眼疾患で、日本人の失明原因第一位となっています。日本人の40歳以上の緑内障の有病率は5.0%であり、開放隅角緑内障は最多の3.9%を占めることが疫学調査より明らかになっています。緑内障の主要な病型である開放隅角緑内障がどのように発症するかは明らかでない点が多いものの、多因子疾患[9]であり、遺伝要因と環境要因が発症に関わることが分かっています。

これまで、開放隅角緑内障についてのゲノム解析は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)という手法を中心に行われ、発症に関連する遺伝子領域が15カ所同定されてきました。しかし、これらの領域の多くはヨーロッパ系人種を対象として同定されたものであり、アジア系人種の遺伝要因の大部分は解明されていませんでした。日本の開放隅角緑内障患者を対象としたGWASは、過去に理研を中心としたグループが実施した、3,000人規模の報告注2)がこれまでで最大のものでした。そこで、共同研究グループは、発症に影響する新たな遺伝要因を同定するために、アジア最大のGWASを試みました。

注2)Osman W et al. A genome-wide association study in the Japanese population confirms 9p21 and 14q23 as susceptibility loci for primary open angle glaucoma. Hum. Mol. Genet., 2012

研究手法と成果

本研究では、開放隅角緑内障の発症のしやすさに関わる遺伝的要因を明らかにするため、バイオバンク・ジャパンの開放隅角緑内障患者3,980名と日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)および多目的コホート研究(JPHC Study)の対照群18,815名を対象に、ゲノム全体に分布する約600万個の一塩基多型(SNP)を対象にGWASを行いました。

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