SATREPS環境ネパールプロジェクトの研究メンバーが、国内で初めて下水からの新型コロナウイルス検出を報告。ネパール人研究者も活躍。
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)
2013年5月〜2019年9月に実施された環境ネパールプロジェクト(研究代表者:山梨大学 風間ふたば教授)の研究メンバーである原本英司教授(山梨大学)は、北島正章助教(北海道大学)と協力し、下水から新型コロナウイルスを検出することに成功しました。
原本教授と北島助教のチームは2020年3月17日〜5月7日にかけて、山梨県内の下水処理場や河川から水サンプル(計13個)を採取。その後、それら水サンプルのPCR検査を実施したところ、サンプル1つから新型コロナウイルスが検出されました。
このサンプルは4月14日に採取された下水処理水で、県内で新たな新型コロナウイルス感染者の報告数が複数人に増えた時期(4月中旬)と採取時期が重なります。また、新型コロナウイルスが検出されなかった多くのサンプルの採取時期は、県内の新たな感染者数が0人〜1人だった時期と重複していました。
こうした下水を用いた新型コロナウイルスのモニタリングは「下水疫学調査」と呼ばれ、広範囲にほぼリアルタイムで実施できるという利点があり、新型コロナウイルスの「感染拡大」や「感染第2波」を覚知する手法として期待されます。
今回の調査には、原本教授の研究室に所属する2人のネパール人研究者も参画しています。Bikash Malla研究員は、SATREPS環境ネパールプロジェクトの開始時(2014年)に山梨大学の大学院に入学、プロジェクト期間中に博士号を取得しました。また、博士2年のOcean Thakali氏は、プロジェクト後半に相手国研究機関のトリブバン大学医学部に研究員として加わり、2018年10月から国費留学生として来日しています。
彼らの活躍について、原本教授は「SATREPSプロジェクトの中で水問題に関心を持ったネパール人が、世界規模のCOVID-19の解決に貢献したいと精力的に活動してくれているのは嬉しい限りです。本人たちも、自身が世界の最前線で研究ができることに喜びを感じているようです」と話します。今後もSATREPSプロジェクトに携わった研究者によって新たな研究成果が発表されることが期待されます。
【報道情報】
- 山梨大学・北海道大学 論文プレスリリース
- https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2020/06/20200626pr.pdf
【プロジェクト情報】
- SATREPS環境ネパールプロジェクトの取り組みはこちら
- https://www.jst.go.jp/global/kadai/h2502_nepal.html(JN)
- https://www.jst.go.jp/global/english/kadai/h2502_nepal.html(EN)
水サンプルを処理(ろ過濃縮)するBikash Malla研究員とOcean Thakali氏