2020-08-25 京都大学
北山忍 こころの未来研究センター特任教授(ミシガン大学教授)らの研究グループは、BCGワクチン接種義務の制度化が新型コロナウイルスの拡散率を低下させる可能性を示唆しました。
新型コロナウイルスによる感染者数や死亡者数は国ごとに大きく異なります。この事実の説明として、BCGワクチン接種義務の制度が関わっているのではないかと議論されています。しかし、現在のところ、国際比較データの分析に伴う方法的問題から結論は明らかではありません。
そこで本研究グループは、まず国ごとの流行の初期における感染者数と死亡者数の増加率を見ることにより報告バイアスの効果を排除し、さらに、様々な交絡要因を統計的に統制しました。その上で、計130数カ国を比較した結果、BCGワクチンの接種を少なくとも2000年まで義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死亡者数共に増加率が有意に低いことを見出しました。この結果は、BCGワクチンの接種義務を制度化することにより、新型コロナウイルスの流行を将来的に抑制できるという可能性を示唆しています。そこで今後、各国ごとに、このような制度を採用・維持するための議論が必要になるかと思われます。
本研究成果は、2020年7月31日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。
図:本研究のイメージ図
書誌情報
日刊工業新聞(8月21日 3面)に掲載されました。