2020-09-01 京都大学
西尾治幾 生態学研究センター研究員、工藤洋 同教授らの研究グループは、植物の季節的な応答における遺伝子の働きは、動物の胚発生や細胞のガン化と共通の仕組みで制御されていることを明らかにしました。
細胞の中でDNAを巻きつけているヒストンタンパク質には、しばしばメチル化などの化学的な修飾がつきます。修飾の種類によって、そこにある遺伝子は活性化されたり抑制されたりします(それぞれ活性型ヒストン修飾、抑制型ヒストン修飾と呼びます)。
本研究グループは、日本に自生するアブラナ科の植物ハクサンハタザオの自然集団を対象として、全遺伝子においてヒストン修飾の経時変化を調べました。その結果、多くの遺伝子で、抑制型ヒストン修飾は長期的には変化するが、短期的には変化しないことがわかりました。また、抑制型ヒストン修飾は、活性型ヒストン修飾の後を追うように、少し遅れて季節的に変化することがわかりました。動物の胚発生においても、抑制型ヒストン修飾は、活性型ヒストン修飾から遅れて変化することが報告されています。したがって、この抑制型ヒストン修飾の「ゆっくりとした」変化は、時間のかかる生物の応答に共通の仕組みであると考えられます。本研究によって、植物においても、季節によってそれぞれの遺伝子のヒストン修飾を変えることにより、活発に働いている遺伝子セットを調節していることが明らかとなりました。
本研究成果は、2020年9月1日に、国際学術誌「Nature Plants」に掲載されました。
図:本研究の概要図
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41477-020-00757-1
Haruki Nishio, Atsushi J. Nagano, Tasuku Ito, Yutaka Suzuki & Hiroshi Kudoh (2020). Seasonal plasticity and diel stability of H3K27me3 in natural fluctuating environments. Nature Plants.