91歳自然観察ガイドの10年越しの観察が論文に
2020-10-16 京都大学
酒井章子 生態学研究センター教授、 直江将司 森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員、長岡信幸氏らの研究グループは、ミヤマニガウリという植物で、秋に葉が花や実を包み、実の成長を促すことを明らかにしました。
植物において、葉は光合成のための器官であり、開花や結実のための葉は、これまで知られていませんでした。ミヤマニガウリの葉は、葉緑体も少なく、光合成よりもいわば「温室」として実を守ることに特化した葉だといえます。
この現象は、論文の第一著者の長岡氏によって、2008年に発見されました。長岡氏は、山形県の月山山麓にある県立自然植物園で毎年観察を重ね、葉が寒さから実を守っているのでは、と考えました。相談を受けた酒井教授、直江研究員らが、2018年に長岡氏と調査を行い、このような葉の役割が明らかとなりました。ただし、「温室」は厳しい寒さから花や実を守る一方、花粉媒介を行う昆虫の訪花を妨げます。温室の形成が植物の交配にどのような影響を与えているのかは、今後明らかにされるべき興味深い課題です。
本研究成果は、2020年10月7日に、「Proceedings of the Royal Society B(英国王立協会紀要)」のオンライン版に掲載されました。
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1098/rspb.2020.1718
Nobuyuki Nagaoka, Shoji Naoe, Yu Takano-Masuya and Shoko Sakai (2020). Green greenhouse: leaf enclosure for fruit development of an androdioecious vine, Schizopepon bryoniifolius. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 287(1936):20201718.