2020-12-15 愛媛大学
ポイント
- バルト海の3海域から採取したタイセイヨウサケの人工孵化個体群および野生個体群を対象に、肝臓の有機ハロゲン化合物(OHC)濃度を測定しました。
- 同時に肝臓の各遺伝子の発現プロファイル(トランスクリプトーム)についても測定しました。
- OHC濃度と遺伝子発現プロファイルを併せて多変量解析したところ、両データは3海域で個々にグループ化され、両データ間に強い相関関係が認められました。
- バルト海のサケの肝臓の遺伝子発現プロファイルは、OHC汚染の影響を受けていることが示唆されました。
概要
有機ハロゲン化合物(OHC)によるバルト海の環境汚染はそこに生息するタイセイヨウサケ(Salmo salar)の健康を脅かす一要因して考えられています。 一方、OHC汚染の影響に関する調査・研究は十分に実施されてきませんでした。沿岸環境科学センターの化学汚染・毒性解析部門の研究グループはフィンランドのヘルシンキ大学の研究者と共同で、バルト海の3海域から採取したタイセイヨウサケの人工孵化個体群および野生個体群を対象に、肝臓のOHC濃度と遺伝子発現プロファイル(トランスクリプトーム)を測定しました。多変量解析の結果として、OHC濃度と遺伝子発現プロファイルは、3海域で個別にグループ化され、両データ間に強い相関関係が認められました。したがってバルト海のサケの肝臓の遺伝子発現プロファイルは、OHC汚染の影響を受けていることが示唆されました。本研究は、2020年11月9日にアメリカ化学会の学会誌Environmental Science & Technologyに掲載されました。
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
特別研究員 Mirella Kanerva
教授 岩田 久人