石灰化結節に起因する急性心筋梗塞に対する薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療の有効性

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2021-01-15 国立循環器病研究センター

石灰化結節に起因する急性心筋梗塞に対し、薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療の有効性を、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄、略称:国循)の心臓血管内科 菅根 裕紀 研修生、心臓血管内科部 冠疾患科 片岡 有 医長、野口 暉夫 副院長らが報告しました。この研究結果は、欧州動脈硬化学会英文機関誌「Atherosclerosis」オンライン版に掲載されました。

背景

突然死の原因にもなりうる急性心筋梗塞は、主にコレステロールを多く含み柔らかい動脈硬化性粥腫の破綻により発症します。しかしながら、一部の症例は、コレステロールとは異性な石灰化成分が冠動脈内へ突出(=石灰化結節)することにより急性心筋梗塞を発症します。急性心筋梗塞に対する薬剤溶出性ステント治療は、ガイドラインにて推奨されているスタンダードな治療ですが、このような石灰化結節に起因する急性心筋梗塞症に対するカテーテル治療の有効性は不明なままでした。

研究手法と成果

国立循環器病研究センターに入院した急性心筋梗塞の患者様657例を解析しました。全症例の5.3%は、石灰化結節に起因する急性心筋梗塞症であり、高血圧、慢性腎臓病、維持透析などの既往を高頻度に有していました。薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療を行った急性心筋梗塞症において、石灰化結節を有する症例は非石灰化結節症例に比して、死亡・心筋梗塞再発・再治療頻度のハザード比が7.68と高く予後不良でした (95%信頼区間 4.61-12.80, p値<0.001)。再治療を要した石灰化結節症例の82.4%においては、ステント内に石灰化結節が再度突出し冠動脈狭窄を引き起こす特徴を有していました。

今後の展望と課題

本研究からは、石灰化結節に起因した急性心筋梗塞症例に対する薬剤溶出性ステントを用いたカテーテル治療の有効性は十分なものではなく、新たな治療対策の必要性が示唆されました。カテーテル治療の有効性が乏しかった原因として、ステント留置によりステント外に押しつぶされた石灰化結節組織は、再度ステント隙間から冠動脈内に突出することが挙げられます。薬剤溶出性ステントは、ステント表層に塗布した薬剤により、ステント留置後に形成される新生内膜増殖抑制に有効ですが、石灰化組織の増成・突出に対しては有効性が乏しいものと考えられます。当センターでは、このような石灰化結節の狭窄病変に対して、ローターブレーターなどの切削治療により治療成績の改善を目指しており、その有効性についても多施設において検証する研究が進行中です。カテーテル治療の他に、石灰化形成を抑制しうる薬物治療の可能性も期待されますが、現時点で石灰化を退縮しうる薬剤は臨床導入されていません。研究責任者の心臓血管内科医長 片岡 有は、石灰化結節形成に寄与するバイオマーカー探索研究についても、科学研究費助成事業により支援を受けて実施しています(20K08415)。石灰化結節に対する有効な薬剤・カテーテル治療の開発・確立を目指し、研究を継続しています。

発表論文情報

著者:Hiroki Sugane, Yu Kataoka, Fumiyuki Otsuka, et al.
題名:Cardiac Outcomes in Patients with Acute Coronary Syndrome Attributable to Calcified Nodule
掲載誌:Atherosclerosis
DOI:10.1016/j.atherosclerosis.2020.11.005.

参考図

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