2021-02-25 京都大学
今井哲司 医学部附属病院講師、中川貴之 同准教授、小柳円花 薬学研究科博士課程学生、松原和夫 名誉教授らの研究グループは、川口展子 医学部附属病院特定病院助教と共同で、タキサン系抗がん剤(パクリタキセルやドセタキセル)の副作用の原因となる病理変化を新たに同定しました。
タキサン系抗がん剤は、乳がんなどの治療で中心的に使用される薬剤ですが、手足の先がしびれたり痛くなる「末梢神経障害」という副作用を高頻度で起こします。しかし、有効な予防法や治療法はなく、重症化するとがん治療を予定通り続けられなくなることもあり、大きな問題となっています。
本研究では、タキサン系抗がん剤の末梢神経障害を発症する乳がん患者およびマウスの血液中でガレクチン-3という生体内物質が増えていること、さらに、そのガレクチン-3は感覚神経を覆っているシュワン細胞から血中へと分泌されていることを発見しました。また、血中に分泌されたガレクチン-3は、マクロファージ(免疫細胞)を感覚神経の周囲に呼び寄せ、炎症を発生させることで痛みを引き起こしていることを突き止めました。これらの発見をもとに、重症化すればがん治療を中断するしかなかったこの副作用に対する、新しい予防法や治療法の開発が進むと期待されます。
本研究成果は、2021年2月20日に、国際学術誌「Cancer Research」のオンライン版に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:今井哲司
研究者名:中川貴之
研究者名:松原和夫
研究者名:川口展子