2021-03-31 京都大学
髙山浩司 理学研究科准教授、梶田忠 琉球大学教授らの研究グループは、マングローブ植物ヤエヤマヒルギ属の全球分布と分化の過程を分布域網羅的な系統解析で解明しました。
マングローブは全世界の熱帯・亜熱帯の沿岸域に広がる森林生態系で、地球環境の維持に重要な役割を果たしています。ところが、マングローブがどのようにして現在の分布域を持つようになったかは、十分にはわかっていませんでした。そこで本研究グループは、マングローブ植物の代表であるヤエヤマヒルギ属植物を世界各地で採集し、分布域網羅的な系統解析を行いました。
その結果、ヤエヤマヒルギ属のインド洋-西太平洋グループと大西洋-東太平洋グループは約1100万年前に分岐し、その後、それぞれのグループでの多様化と分布拡大を経て、現在の分布域を持つに至ったことがわかりました。分断の時期は、大陸移動によるチシス海の消滅、季候の寒冷化、赤道海流の減衰の時期と一致しています。その後、アメリカ大陸太平洋側から南太平洋に至る、極めて長距離の海流散布による移動が最近になって生じたことで、2つのグループが南太平洋諸島で再会して、雑種を形成するようになったことも明らかとなりました。この研究は、1100万年もの長い歴史の中で起こった地史的変動、季候変動、海流による分散が、現在のマングローブ植物の分布形成に大きな役割を果たしたことを示しています。
本研究成果は、2021年3月30日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者名:髙山浩司