2021-07-27 東京大学,慶應義塾大学,科学技術振興機構
ポイント
- 分子振動由来の誘導ラマン散乱(SRS)と、蛍光分子の発光を検出する統合イメージングシステムを開発しました。本システムでは、SRS信号と蛍光を同時検出するとともに、分子振動周波数・蛍光励起波長・蛍光検出波長を高速に切り替えることが可能です。これにより、超多重イメージングを高速に行うことができます。
- 本システムを用い、ラマン標識と蛍光標識を施された生細胞の8多重イメージングを従来報告より20倍以上高速な30秒以内で行うことが可能になりました。また、この手法を用いて、生きた細胞内の小器官の複雑な相互作用や、多数の細胞の小器官の分布を詳細に調べることに成功しました。
- 本技術は、複雑で多様な細胞の詳細な解析を実現するものであり、生命の仕組みの解明や、薬剤開発への応用展開が期待されます。
東京大学大学院 工学系研究科電気系工学専攻の小関 泰之 教授、寿 景文 博士学生、慶應義塾大学 医学部 薬理学教室のオダ ロバート 特任助教、塗谷 睦生 准教授、安井 正人 教授らは、コロンビア大学、清華大学、ハワイ大学との共同研究グループとともに、細胞内生体分子を誘導ラマン散乱(SRS)により検出するSRS顕微法と、蛍光分子の発光を検出する蛍光顕微法を統合し、複雑で多様な細胞を詳細に解析する技術を開発しました。
開発したSRS・蛍光統合イメージングシステムでは、分子振動周波数・蛍光励起波長・蛍光検出波長を高速に切り替えることができ、1秒間に30フレームのラマン画像・蛍光画像を取得しつつ、フレームごとに分子振動周波数・蛍光励起波長・蛍光検出波長を設定することができます。これにより、生体試料の超多重イメージングに要する時間を大幅に削減しました。
本システムを用い、ラマン標識と蛍光標識された生細胞内の8多重イメージングを30秒以内で行うことが可能になりました。これは、従来のSRS・蛍光顕微鏡と比較して20倍以上高速です。また、この手法を用いて、生きた細胞内の小器官が複雑に動き回って相互作用する様子や、多数の細胞内における小器官の空間分布を詳細に調べることに成功しました。
本技術を用いることによって、複雑で多様な細胞内の仕組みをより詳細に解析することができ、生命の仕組みの解明への貢献や、薬剤開発への応用展開が期待されます。
本研究成果は、Elsevier社の科学誌「iScience」のオンライン版(2021年7月27日付け)で公開されました。
本研究は、科学技術振興機構 CREST「量子光源による超高感度分子イメージング」(JPMJCR1872)、科学研究費補助金(JP19J22546、JP20H02650、JP20H05725、JP18K18847)、文部科学省Q-LEAP(JPMXS0118067246)、NIH(R01 GM128214)の支援を受けて行われました。
<論文タイトル>
- “Super-multiplex imaging of cellular dynamics and heterogeneity by integrated stimulated Raman and fluorescence microscopy”
- DOI:10.1016/j.isci.2021.102832
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
小関 泰之(オゼキ ヤスユキ)
東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
慶應義塾大学信濃町キャンパス総務課
科学技術振興機構 広報課