2021-11-08 医薬基盤研究所
エイズウイルスの制御には感染者に対し抗ウイルス薬の投与が行われていますが、エイズウイルスは体内から決して排除されることはなく、潜伏感染を続けるため、エイズ発症抑制のために生涯に渡って投薬が必要です。このような長期服用は、薬剤耐性ウイルスの出現やさまざまな副作用が問題となっており、エイズウイルスを完全に排除する治療法の開発が待たれていました。
この度、弊所、霊長類医科学研究センターの保富康宏センター長らの研究グループは、日本BCG研究所と共同で、アジュバント分子組み込み弱毒ウイルスを用いて、エイズウイルスを生体内から完全に排除することに成功しました。
今回、アジュバント分子組み込み弱毒ウイルスをワクチンとしてカニクイザルに接種し、その後、強毒性エイズウイルスを感染させたところ、一旦は感染が成立しましたが、その後強毒性エイズウイルスが完全に排除されていることを見出しました。また、アジュバント分子組み込み弱毒ウイルスワクチンを接種したカニクイザルの免疫学的解析を行ったところ、細胞性免疫が誘導亢進されていることを明らかにしました。この細胞性免疫の免疫防御作用が強毒性エイズウイルスの排除をもたらすことが示唆されました。今回の結果は、生体内からエイズウイルスが完全に排除される新たなワクチンや治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、国際学術雑誌 『NPJ(Nature Partner Journal)Vaccines』に10月22日(日本時間)にオンライン掲載されました。