糖尿病の栄養食事指導を補助するためのアプリを開発 ~株式会社askenと共同開発~

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2021-12-09 京都大学

概要

稲垣暢也 医学研究科教授、幣憲一郎 医学部附属病院副部長、池田香織 同講師らの研究グループは、京都大学医学部附属病院、京都桂病院、田附興風会医学研究所北野病院、神戸市立医療センター中央市民病院において、糖尿病の栄養食事指導を補助して治療に貢献するモバイルアプリケーションの効果を検討する臨床試験を実施します。

本アプリケーションは株式会社askenとの共同研究によって開発されました。また、本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和3年度「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業 健康・医療情報活用技術開発課題」の支援を受けて実施されます。

この臨床試験の先には、本アプリケーションの活用によって糖尿病治療に貢献することを目指します。

本研究のイメージ

モバイルアプリで食事を含むPHRの記録と評価を行い、それを活用して診察や栄養食事指導を行う

背景

近年、糖尿病治療の選択肢は多様化し、糖尿病患者におけるHbA1c(ヘモグロビンエーワンンシー)・血圧・脂質など、治療の目標値の達成割合は改善傾向にありますが、肥満の程度を表すBMI(ビーエムアイ)については必ずしもそうではありません。 国内外の大規模研究の結果からも、目標のHbA1cを達成するために積極的に薬剤を使用する際、体重を適正に保つことはとても難しいことがわかります。 これは、糖尿病治療において薬剤のみでは成し得ない「体重適正化」が、食事療法の効果的な実施にかかっていることを意味しています。

研究手法・成果

食事療法とは、何をいつどのように食べるかに関わることで、患者さん一人一人で異なる上に、一人の患者さんでも毎日同じではありません。何をどれだけ食べているかということを正確に評価できれば、次にすべきことが見えてきますが、患者さんに負担の大きい評価方法では長続きしません。本アプリケーションでは、株式会社askenが既に有する技術によって、食事の写真を撮り、メニューを登録するだけで、その場で食事中の栄養素を算出することができます。この技術は、食材の重さを量って記録する食事記録法と高い相関があり、かつ簡便なため毎日実施することが可能です。この技術によって、患者さんの記録の負担を軽減し、医療機関での管理栄養士による指導の根拠となる食事評価をより確かなものにし、かつ、指導の準備の時間を短縮することが期待されます。

日々の食事記録は患者さんの個人健康記録(PHR:Personal Health Record)の一つであり、体重、血圧、活動量などと同様に、健康の維持・増進のために活用できる貴重なデータとなります。技術の発達により、このような日常生活における健康データを大量に収集できるようになりました。本プロジェクトでは、このPHRを医療現場での検査結果や治療内容を含む電子医療記録(EHR:Electronic Health Record)とつながったビッグデータとして蓄積できるようにし、治療や指導の効果をより詳細に検証することを目指します。食事療法や運動療法の効果の科学的検証の基盤を築き、糖尿病の重症化予防の大きな一歩となると期待されます。

これに加えて本アプリケーションでは、糖尿病の治療の現場における医師と管理栄養士それぞれの専門性や、その間の連携を考慮して開発したプログラムを備えており、医療機関の管理栄養士による栄養食事指導とともに使用することで、様々な状況にあわせて個別化された指導を患者さんの日常生活に届けられると期待されます。

波及効果、今後の予定

令和3年度中に2型糖尿病患者を対象として本アプリケーションの体重減少効果を検討する特定臨床研究を開始する予定です。

研究プロジェクトについて

本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の令和3年度「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業 健康・医療情報活用技術開発課題」に採択された、「食事療法の計画・実行支援AIプログラムによりPHR・EHRを糖尿病重症化予防医療に活用する仕組みの研究開発」として実施されます。

参考

株式会社asken

本社:東京都新宿区、代表取締役社長 中島洋

URL:https://www.asken.inc

本臨床研究にて使用するAI食事管理アプリを運営。食事写真をアプリに投稿することによりAIが食事内容を解析し、カロリーなど14種類の栄養素の過不足がわかるグラフやアドバイスを提供する。

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