2021-12-14 京都大学
積山薫 総合生存学館教授らの研究グループは、3か月間の運動介入により高齢者の認知機能が向上し、脳の構造(皮質容積や皮質厚)が変化することを明らかにしました。
運動習慣が加齢による認知機能の低下を防ぎ、脳の機能や皮質容積、皮質厚を変化させることは報告されてきましたが、認知機能と脳の変化がどのように関係するかについてははっきりした結果が得られていませんでした。本研究グループは、高齢者50名を体操教室に週1回通う介入群と通わない待機群に分け、認知課題の成績や脳の変化にどのような違いが現れるかを調べました。
その結果、介入群は認知成績が向上し、前頭前野(中前頭溝)の皮質容積が増えているほど認知成績が向上していました。待機群では、課題成績や前頭前野の皮質容積や皮質厚の変化はなく、海馬の容積が減少していました。また、待機期間中、認知成績をより維持している人ほど、認知課題中の前頭前野の領域間のつながり(機能的連結)が強くなっており、認知機能低下を補う代償機能が働いていると考えられます。これらの結果は、高齢者が日頃の運動を続けることにより、脳や認知機能の変化を促し、日常生活の質を維持できる可能性を示唆しています。
本研究成果は、国際学術誌「Cerebral Cortex」の10月号に紙面で掲載されました。
図:3か月間の運動介入により、前頭前野における皮質容積の増加と認知機能の向上がみられ、両者には相関がみられました
研究者情報
研究者名:積山薫