2022-04-14 愛媛大学
愛媛大学沿岸環境科学研究センター(CMES)の環境毒性学研究室は、これまでの研究で、出生前のビスフェノールA(BPA)曝露が性・年齢依存的にラット胎児肝臓の遺伝子発現量(トランスクリプトーム)および脂質(リピドーム)組成に影響を与えることを明らかにしてきました。本研究では、妊娠中にBPAに曝露した母ラットの授乳期以降の影響を調査し、仔ラットの影響と比較しました。その結果、BPA曝露から4週間後でも、インスリンシグナル・概日リズム・免疫応答に関連する肝臓トランスクリプトームの変化がみられましたが、脂質組成にほとんど変化は認められませんでした。このことは、BPAの胎児期曝露は、成獣期の曝露よりも深刻であることを示唆しています。さらに、多変量解析ツールで肝臓のマルチオミクス(トランスクリプトーム・リピドーム)データを解析することによって、BPA曝露した母獣と仔獣の影響の違いを高い精度で判別することに成功しました。またこの解析によって、パルミチン酸および概日リズム・インスリン応答・脂質代謝に関連する遺伝子が、母獣・仔獣の2世代にわたるBPAの影響の新規バイオマーカー候補として同定されました。
研究のポイント
●妊娠中のビスフェノールA曝露が出産後の母ラットと新生仔に及ぼす影響を比較した。
●ビスフェノールAは、母獣の概日リズム・免疫反応・インスリン耐性に影響を及ぼした。
●しかしながら、マルチオミクスレベル(トランスクリプトーム・リピドーム)での影響は新生仔よりも母獣のほうが軽微だった。
●多変量解析により、マルチオミクスレベルでの影響を母ラットと新生仔で判別することに成功した。
妊娠中のビスフェノールA 曝露が出産後の母ラットと出生後の仔ラットに及ぼす影響の概要
本件に関する問い合わせ先
愛媛大学沿岸環境科学研究センター
教授 岩田久人