2022-05-17 東京大学医学部附属病院
慢性腰痛(CLBP:chronic low back pain)は、世界的にみて最も生活に支障をきたす年数が長く、働く人のパフォーマンス低下にも影響する症状であり、その対策は社会課題の一つとなっています。慢性腰痛に対する最も有用な対策は患者教育と運動療法です。しかし、その方法はいまだ確立しておらず、かつ運動は継続しないことが難点とされています。
東京大学医学部附属病院 22 世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座の松平 浩特任教授(責任研究者)は、塩野義製薬株式会社(実施責任組織)と、働く世代の患者さんに対して、SNSを活用した会話ログと運動を人工知能(AI)により紐づけて継続的にリモートで提供し、その有用性を検討しました(試験ID:UMIN000041037)。その結果、痛みを緩和するための薬物治療を含む通常診療を受診した患者群と比較して、通常診療に加え患者教育と運動療法をセットにしたプログラムをモバイルアプリで実施した患者群の方において、慢性腰痛が改善していることがわかりました。このことから、スマートフォンとともに普及したモバイルアプリという手段を臨床で活用することが、患者さんのライフスタイルに合わせて短時間かつ簡便に運動を習慣化することにつながる有効な手段のひとつであることが明らかになりました。
慢性腰痛に対する運動療法はエビデンスのある治療法として広く普及していますが、薬の処方とは異なりオンライン診療では運動療法を継続、遵守することが困難なことなど導入に障壁があります。今回の研究結果は、慢性腰痛に関連する分野でのオンライン診療への発展も期待されます。
本研究成果は、日本時間5月16日に医学雑誌「JMIR mHealth and uHealth」オンライン版に掲載されました。