2022-05-24 京都大学
顔の表情は、ヒトにとっても、他の社会的な動物にとっても、コミュニケーションや感情を表すのに中心的な役割を担っています。ヒトの表情の意味は、その人に何を考えているか、どんな気持ちなのか聞くことで、比較的簡単に分かりますが、動物には内面を聞くことができません。感情や主観などの内面は、ヒトでさえ、解釈したり評価したりするのは難しいものです。たとえば、唇が後ろに引かれて歯が見えているという、同じような形に見える表情でも、状況や動物種によって大きく違う情報を伝えます。ヒトでは挨拶だったり、幸せな気持ちだったりしますが、チンパンジーでは恐れだったり、服従だったりします。そのため、動物の表情の意味を調べるためには、適切なツールが必要です。ヒトの表情の研究には、Facial Action Coding System (FACS)というツールが使われています。FACSは他の霊長類やイヌ、ネコなどに応用されていますが、コモンマーモセットのものはありませんでした。
そこで、Catia Caeiro ヒト行動進化研究センター助教、宮部貴子 同助教、Duncan Wilson 文学研究科講師、Abdelhady Abdelrahman Glasgow Caledonian University修士課程学生、Anne Burrows Duquesne University/University of Pittsburgh教授らの共同研究グループは、コモンマーモセットのFACS(CalliFACS)を新たに作りました。コモンマーモセットには、多くの顔の動きがあり、従来考えられていたよりも表情豊かであることが明らかになりました。
本研究成果は、2022年5月17日に、国際学術誌「PLOS One」にオンライン掲載されました。この論文は、CalliFACSのマニュアルとしても機能するものです。
図:コモンマーモセットのアクション・ユニット(AU)とアクション・ディスクリプタ―(AD)の例。矢印はそれぞれの筋肉が収縮した時の顔の動きの方向をあらわす。AU1+2 眉を上げる、AU41 眉間を下げる、AU110 上唇を上げる、AU12 口角を引く、AU16 下唇を下げる、AU301 房毛(耳の周りの白いふさふさの毛)を下げる
研究者情報
研究者名:CAEIRO Catia
研究者名:宮部 貴子
研究者名:WILSON Duncan Andrew