2023-05-16 新潟大学
ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、オートファジー(1)がミトコンドリアを選択的に分解する現象であり、ミトコンドリアの品質管理に重要な役割を果たします。マイトファジーの過程で、ミトコンドリアはオートファゴソームと呼ばれる球状の脂質膜に包まれます。この際に、大きなミトコンドリアが小さなオートファゴソームに包み込まれるメカニズムは、長らく不明でした。
本学大学院医歯学総合研究科の福田智行准教授、古川健太郎医学部准教授、神吉智丈教授、微生物化学研究所の丸山達朗上級研究員、北海道大学遺伝子病制御研究所の野田展生教授らの研究グループは、新規のミトコンドリア分裂因子であるMitofissin(Mitochondrial fission protein、マイトフィッシン)を発見し、この因子がマイトファジーの際にミトコンドリアをオートファゴソームに収まる大きさに分裂させることを明らかにしました。また、Mitofissinは、ミトコンドリア膜に直接作用して膜を切断することができるため、分裂の機序に関するこれまでの概念を覆す新たなメカニズムで作用することも明らかにしました。本研究は、マイトファジーの分子機構について未解決であった問題を解明しただけではなく、オルガネラ(細胞小器官)の形態変形に関する全く新しいメカニズムの存在を明らかにした点でも、重要な成果です。
本研究は、生命創成探究センター/生理学研究所の村田和義特任教授、理化学研究所生命機能科学研究センターの岡田康志チームリーダー(東京大学大学院医学系研究科教授)、本学の芝田晋介教授、米国ミシガン大学Daniel J. Klionsky教授らとの共同研究で行われました。
本研究成果のポイント
- 新規ミトコンドリア分裂因子Mitofissin/Atg44を発見
- Mitofissinによるミトコンドリア分裂がマイトファジーに必須であることを解明
- Mitofissinはミトコンドリア膜に直接結合し、膜の脆弱性を生み出すことで膜を切断することを解明
【用語解説】
(1)オートファジー:細胞内で新たに作り出された脂質の膜(隔離膜)が伸長し、細胞成分を包み込むように球状の構造(オートファゴソーム)が形成されます。膜に包まれた成分は分解酵素によって低分子へと分解されます。この一連の反応をオートファジーと呼びます。オートファジーはタンパク質をアミノ酸に分解して栄養として再利用するだけでなく、ミトコンドリアや小胞体のような細胞小器官を分解することで、その質や量を調節しています。細胞小器官のような比較的大きな細胞成分を包み込んで分解するためには、各細胞成分に特異的なメカニズムが必要です。
研究内容の詳細
新規ミトコンドリア分裂因子を発見 ~マイトファジーの過程におけるミトコンドリア分裂のメカニズムを解明~(PDF:0.3MB)
論文情報
【掲載誌】Molecular Cell
【論文タイトル】The mitochondrial intermembrane space protein mitofissin drives mitochondrial fission required for mitophagy
【著者】Tomoyuki Fukuda#, Kentaro Furukawa#, Tatsuro Maruyama#, Shun-Ichi Yamashita, Daisuke Noshiro, Chihong Song, Yuta Ogasawara, Kentaro Okuyama, Jahangir Md. Alam, Manabu Hayatsu, Tetsu Saigusa, Keiichi Inoue, Kazuho Ikeda, Akira Takai, Lin Chen, Vikramjit Lahiri, Yasushi Okada, Shinsuke Shibata, Kazuyoshi Murata, Daniel J. Klionsky, Nobuo N. Noda*, Tomotake Kanki*(福田智行#、古川健太郎#、丸山達朗#、山下俊一、能代大輔、Chihong Song、小笠原裕太、奥山健太郎、Jahangir Md. Alam、早津学、三枝徹、井上敬一、池田一穂、高井啓、Lin Chen、Vikramjit Lahiri、岡田康志、芝田晋介、村田和義、Daniel J. Klionsky、野田展生*、神吉智丈*)#同等貢献、*責任著者
【doi】10.1016/j.molcel.2023.04.022
本件に関するお問い合わせ先
広報事務室