2024-02-19 京都大学
鼻の穴から一定の高さの超音波を発することで知られるキクガシラコウモリにおける超音波の地域性は、鼻骨形態の高い形態的変異性(変わりやすさ)と関連している可能性がはじめて示唆されました。
池田悠吾 総合博物館研究員を代表とする日韓の研究者の国際共同研究グループは、ニホンキクガシラコウモリがエコーロケーション(反響定位)の際に利用する超音波の最大周波数が地域ごとに異なることに着目し、博物館標本をCTスキャンすることで作成した頭骨形態の3Dモデルを用いて、三次元幾何学的形態測定法(3-dimensional geometric morphometrics)による変異解析を実施しました。これにより、本種の地域集団間で違いが生じる鼻骨の部位と、日本列島に同所的に生息するコキクガシラコウモリとの種間で違いが生じる鼻骨の部位が異なることが明らかになり、鼻骨の部位によって形態的変異性が異なることが示唆されました。キクガシラコウモリの「方言」とも捉えられる地域ごとの超音波の違いが、鼻骨の変わりやすさに起因することを示唆する本研究成果は、超音波という“言葉の齟齬”によって生じるコウモリ独自の種分化メカニズムや島嶼環境への適応進化を解明する上で重要な知見を提供するものです。
本研究成果は、2024年2月12日に、国際学術誌「Acta Chiropterologica」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「ヒトと同じ哺乳類であるコウモリ類は、私たちには聞くことのできない超音波を用いて、私たちが考えるよりずっと高度なコミュニケーションを取っているかもしれません。コウモリが発する超音波や言葉に地域性がうまれる仕組みを解明することは、哺乳類で2番目に種数が多いコウモリ類の種分化のメカニズムにつながるだけでなく、コウモリがより身近に感じられることにもつながると考えています。」(池田悠吾)
詳しい研究内容について
キクガシラコウモリの鼻骨形態の“変わりやすさ”が超音波の地域性をうむ―頭骨の三次元幾何学的解析から初めて解明―
研究者情報
研究者名:池田 悠吾