RNA-分子間相互作用を大規模に解析する新たな技術を開発~RNA標的低分子創薬への貢献に期待~

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2024-05-10 東北大学

多元物質科学研究所 准教授 鬼塚和光
多元物質科学研究所 教授 永次史

【発表のポイント】

  • 数千のRNA(注1)構造に対する低分子の相互作用を一度の実験で解析できる技術を開発しました。
  • 実施例として、本技術を用いて三種類のRNA結合性低分子の結合選択性(注2)を示しました。これまで評価が難しかったRNA構造に対する結合選択性評価を含め、本系で得られた情報が正しいことを実験的に確かめました。
  • 本技術により得られたRNA結合選択性情報が、RNA結合分子探索法の一つである蛍光指示薬競合置換アッセイ(注3)のRNA標的を選択する際に有用であることを示しました。

【概要】

タンパク質を標的とした従来の創薬に代わり、RNAを標的とした低分子創薬の開発が、難治性疾患に対する新たな治療薬候補として注目されています。RNA結合分子の性質を理解して創薬に適した分子を設計するためには、対象分子のRNA結合選択性を大規模に調べる技術が非常に重要です。しかしこれまでの解析技術では、RNAに対する結合性情報を大規模に調査するのは困難でした。

東北大学多元物質科学研究所の鬼塚和光 准教授、永次 史 教授、大学院生の長澤瞭佑 氏(大学院理学研究科化学専攻)、京都大学iPS細胞研究所の齊藤博英 教授、小松リチャード馨 氏(当時 京都大学 大学院生)らは、マイクロRNA前駆体やウイルスRNAなどの数千種の部分構造に対する低分子のRNA結合選択性を大規模に解析する技術を開発しました。これまで結合選択性評価が難しかったRNA構造を含め、本系で得られた結合選択性情報が正しいことを実験的に確かめ、さらに得られた情報がRNA結合性分子の探索にも有用であることを示しました。

RNA結合性低分子の結合性の理解を深め、新たな分子の設計や探索にも役立つことから、RNA標的低分子創薬に大きく貢献すると期待できる成果です。

本研究成果は2024年5月1日、科学誌Communications Chemistryに掲載されました。

RNA-分子間相互作用を大規模に解析する新たな技術を開発~RNA標的低分子創薬への貢献に期待~
図1. 本技術によるRNA―分子間相互作用の大規模解析のスキーム図

【用語解説】

注1. RNA:
リボ核酸の略。タンパク質をコードするメッセンジャーRNAだけでなく、コードしないノンコーディングRNAも存在し、その種類ごとに様々な機能を持つことが知られている。

注2. 結合選択性:
ここでは多数のRNAが存在する中で、低分子がどのような配列や構造を持つRNAに結合するのかを表した性質を意味する。

注3. 蛍光指示薬競合置換(FID)アッセイ:
RNAと結合することで蛍光性が変化する蛍光指示薬を用いて、RNA結合分子を探索する手法。テスト化合物がRNAに結合するとき、蛍光指示薬を追い出すことで蛍光強度が変化するため、その蛍光強度の変化でヒット化合物を特定する。FIDアッセイでは、蛍光指示薬が結合可能な標的RNAを選択する必要があるが、その報告例は限られていた。

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 鬼塚 和光

東北大学多元物質科学研究所
教授 永次 史

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室

細胞遺伝子工学
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