2024-12-03 京都大学
野村紀通 医学研究科准教授、塩野谷果歩 東京理科大学博士課程学生、渡士幸一 同客員教授(兼:国立感染症研究所治療薬開発総括研究官)、朴在鉉(パク ジェヒョン) 横浜市立大学研究員(研究当時)、浴本亨 同助教、池口満徳 同教授、朴三用(パク サンヨン) 同教授らの共同研究チームは、クライオ電子顕微鏡および分子動力学シミュレーションを用いてサルとヒトの胆汁酸輸送体(NTCP)の立体構造およびダイナミクスを比較し、遺伝子改変と感染実験により、B型肝炎ウイルス(HBV)受容体としての機能性を決定するメカニズムを明らかにしました。これにより、ウイルスが感染するかどうかを左右するNTCPの構造的特徴を明らかにしました。
本研究成果は、2024年10月25日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究の概要:HBV preS1結合はmNTCPタンパク質の2つの領域によって妨害される。(a) mNTCP(シアン)-胆汁酸(オレンジ)複合体のクライオ電子顕微鏡構造。(b) mNTCP(シアン)とHBV preS1(赤)(PDB: 8HRX)の仮想的重ね合わせ。(c) mNTCPの86番目アスパラギン(青)によってHBV preS1結合は不安定となる。(d) mNTCPの158番目アルギニン(青)によってHBV preS1の結合は妨害される。
研究者のコメント
「ヒトとサルは進化的近縁種で、ゲノム配列が似ているにもかかわらず、サルはHBVに感染しません。このような『種間の壁』は、異なる動物からさまざまなウイルスの流入を守る役割を果たしています。一方、ウイルスの方もこの壁を何らかの方法で越える機会をうかがっていて、そこにウイルスと宿主の攻防があります。新型コロナウイルスのパンデミックも他の動物から種間の壁を越えてヒトに感染することで発生したと考えられており、種間の壁の実態を明らかにすることは大変重要です。私たちは『サルに学ぶ』という観点で研究を進めてきました。今回の研究成果は、ウイルスが動物種を越えて流入・伝播するリスクを考察する上で有用な情報です。」(渡士幸一)
詳しい研究内容について
サルはなぜB型肝炎ウイルスに感染しないのか~ウイルス感染の「種間の壁」が生じる要因を解明~
研究者情報
研究者名:野村 紀通
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1038/s41467-024-53533-6
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/290674
【書誌情報】
Kaho Shionoya, Jae-Hyun Park, Toru Ekimoto, Junko S. Takeuchi, Junki Mifune, Takeshi Morita, Naito Ishimoto, Haruka Umezawa, Kenichiro Yamamoto, Chisa Kobayashi, Atsuto Kusunoki, Norimichi Nomura, So Iwata, Masamichi Muramatsu, Jeremy R. H. Tame, Mitsunori Ikeguchi, Sam-Yong Park, Koichi Watashi (2024). Structural basis for hepatitis B virus restriction by a viral receptor homologue. Nature Communications, 15, 9241.