世界中の筋疾患専門医を対象に筋病理標本作製ノウハウをYouTubeに公開
2018-01-12 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP),マヒドン大学
筋生検手技 |
生検筋の固定 |
凍結筋の送付 |
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市 理事長:水澤英洋)神経研究所(所長:武田伸一)疾病研究第一部 西野一三 部長らの研究グループと、マヒドン大学シリラート病院(タイ)病理部ジャンティマ・タンブーン医師らのグループの共同制作による世界初の「筋生検・固定・検体送付の手技解説動画」として、英語・日本語・タイ語の3ヶ国語で解説した動画をYouTubeに公開しました。
筋ジストロフィーやミオパチーを初めとする難治性の神経・筋疾患の医療と研究に取り組んでいるNCNPでは、メディカル・ゲノムセンターを窓口として1978年以来40年にわたり筋病理診断サービスなどの専門的診断サービスを日本全国の医療機関に向けて提供してきています。西野部長らは、筋疾患の原因解明と治療法開発のために、世界各国の医療者や医療機関に対しても、筋病理診断や遺伝子変異を調べる遺伝子解析等について教育・支援活動を提供してきております。
高品質の筋病理標本を作製するためには筋生検(外科手技)、固定、輸送を含む解析前の全ての過程で、正しい手技を使用する必要があります。筋疾患の全ては患者数の少ない希少疾患のため、日本に限らず、世界においても専門家が少ない事情があり、世界各地の医師が筋生検および検体固定手技を学ぶ機会も限られています。そのような中、タイのマヒドン大学シリラート病院と共同で、筋生検手技、筋生検検体固定方法、凍結筋送付方法の3つの動画からなる世界初のアニメーション付き手技解説動画を制作し、世界中の研究者や医師に対して、YouTube上で公開しました。この解説動画には英語・日本語・タイ語の3つのバージョンがあります。
西野部長らは、毎年全国の若手医師に対して、筋生検検体の処理方法と筋病理診断の基本に関する研修の機会を提供するとともに、アジアを中心とする外国からも若手医師を受け入れ、研修・研究を進めています。帰国した医師の多くはそれぞれの国・地域での中心的な人材として筋疾患の医療水準向上に寄与しています。今回の動画制作でタイ側の代表者であるタンブーン医師もNCNPで研修を受けた1人です。NCNPは今後も、診断支援・研究推進・人材育成を通じて、日本のみならず世界の筋疾患医療向上に寄与していきます。
■筋生検・検体固定・検体送付方法の教育動画
URL:http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/video.html
著作権は、国立精神・神経医療研究センターとシリラート病院に帰属します。これらのビデオのいかなる部分にも改変を加えないこと、および出典を明らかにして謝辞を加えることを条件に、医学的および学問的用途には自由に使用して頂けます。
■用語解説
・筋病理診断サービス
NCNPでは、1978年以来35年以上にわたり筋病理診断サービスを提供しています。国内の筋病理診断の7割以上がNCNPで行われており、これまでに診断した件数は17,000例を超えています。診断後の検体は筋レポジトリーとして大切に保存され、世界有数の規模を誇っています。このレポジトリーに保管された検体は、患者さんからの同意を得た上で、病気の原因解明や治療法開発を目指した研究に広く利用されています。
■お問い合わせ先
【研究に関するお問い合わせ】
西野 一三(にしの いちぞう)
国立精神・神経医療研究センター 疾病研究第一部長
【報道に関するお問い合わせ先】
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 総務課広報係