マクロファージに発現するCyclin Jを介した新たながんや感染制御機序
2022-04-13 京都大学
竹内 理 医学研究科教授らの研究グループは、感染やがん免疫応答にも重要な免疫細胞であるマクロファージが、サイクリンJ(Cyclin J)という細胞内タンパク質により制御される新たなメカニズムを見出しました。
サイクリンJ はサイクリンファミリー属し、感染や炎症に対してマクロファージで発現が誘導されます。本研究で、サイクリンJがマクロファージの好気的解糖やミトコンドリア機能を強調的に制御し、マクロファージからの炎症性サイトカイン注1を減少させることを見出しました。サイクリンJは、サイクリン依存性リン酸化酵素(CDK)と相互作用し、解糖系の活性化に関わる転写因子FoxK1をリン酸化して抑制する事、また、ミトコンドリアの断片化に関わる分子であるDrp1をリン酸化してミトコンドリアを断片化させ、活性酸素種の産生減弱させていることが分かりました。マクロファージでサイクリンJを欠損させたマウスを作製すると、このマウス由来のマクロファージでは炎症応答が亢進しており、このマウスは細菌感染に対する抵抗力が増していることが分かりました。一方、このマウスにがん細胞を移植すると、サイクリンJを欠損した腫瘍内のマクロファージは、がん細胞の成長を助けてしまう事が分かりました。このように、サイクリンJは、マクロファージの代謝を通じて感染に対する炎症応答やがん免疫応答を制御する、新たな鍵分子として機能することを明らかにしました。
本研究成果は、2022年4月12日(現地時刻)に国際学術誌「Science Signaling」にオンライン掲載されました。
図 サイクリンJによる炎症抑制メカニズム(A)と、サイクリンJ発現とマクロファージ状態の関連(B)
研究者情報
研究者名:竹内 理