心不全患者に対する外来心臓リハビリテーションの効果:リアルワールドデータを用いた検討

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2022-12-05 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)情報利用促進部の金岡幸嗣朗上級研究員、岩永善高部長、奈良県立医科大学の今村知明教授らのグループが、我が国における心不全入院後の外来心臓リハビリテーションの施行は、非施行群と比較して、医療費の増加を伴わずに心不全患者の予後改善、心不全再入院の減少と関連することを、レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて解明しました。
この研究成果は、European Journal of Preventive Cardiologyオンライン版に、令和4年12月2日に掲載されました。

■背景

心不全患者数は、日本において増加傾向にあり、再入院を繰り返すことが知られています。心不全患者に対する包括的心臓リハビリテーションは、運動療法、患者教育、薬物治療などを含めた概念で、身体機能の改善や再入院の減少と関連することがこれまでの研究で示されていました。一方で、近年の心不全患者に対する外来心臓リハビリテーションの現状および、リハビリテーション施行と、再入院、医療費や薬物療法を含めた様々な要因との関連についての大規模な報告はありませんでした。

■研究手法

レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、NDB)は、我が国全体の入院・外来を含むほぼ全ての保険診療を含むデータベースです。NDBには、患者の性別、年齢、病名、処置や投薬内容などの内容が含まれます。本研究では、NDBから、2014年度から2019年度に、心不全で緊急入院し、かつ、入院中に心臓リハビリテーションを受けている患者を対象としました。退院後150日以内の外来心臓リハビリテーション施行の有無で患者を2群にわけ、全死亡を主要エンドポイントとし、心不全再入院、退院1年後の心不全に対する薬物治療内容、退院1年半の医療費を副次エンドポイントとして設定し、交絡因子を調整し、解析を行いました。

■成果

心不全入院した250,528人の対象患者のうち、17,884人(7.1%)の患者が外来心臓リハビリテーションを受けていました。患者の背景をプロペンシティスコアマッチングで調整後、外来心臓リハビリテーションの施行は、全死亡の減少、心不全再入院の減少と関連しており、1年後のβ遮断薬などの心不全薬物治療の継続割合が高い結果でした。また、外来心臓リハビリテーション施行群では、非施行群と比較し、外来医療費は増加する一方、入院医療費は減少しており、総医療費の増加はみられませんでした。

■今後の展望と課題

本研究から、近年の我が国においても、外来心臓リハビリテーションの施行は、心不全患者の死亡や再入院の減少と関連していることが示されました。さらに、心不全患者に対する心臓リハビリテーションの施行は、医療費の観点からみても、推奨されるべき治療法であることがわかりました。一方で、外来の心臓リハビリテーション施行割合は依然として低く、今後増加させていくことが必要であることが示唆されました。

■発表論文情報

著者: Koshiro Kanaoka, Yoshitaka Iwanaga, Michikazu Nakai, Yuichi Nishioka, Tomoya Myojin, Shinichiro Kubo, Katsuki Okada, Tatsuya Noda, Yasushi Sakata, Yoshihiro Miyamoto, Yasushi Sakata, Yoshihiko Saito, Tomoaki Imamura.
題名: Multifactorial Effects of Outpatient Cardiac Rehabilitation in Patients with Heart Failure: A Nationwide Retrospective Cohort Study
掲載誌: European Journal of Preventive Cardiology

■謝辞

本研究は、厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)循環器病に係る急性期から回復期・慢性期へのシームレスな医療提供体制の構築のための研究(21FA1012)、国や都道府県が循環器病対策に関する計画を策定する際に必要な利用可能な指標の設定、及び新型コロナウィルス感染症による循環器病への影響の評価のための研究(22FA1701)により支援を受けました。

報道関係の方からのお問い合わせ
国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室

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