幹細胞の栄枯盛衰のメカニズムを提唱~多細胞組織における階層性と競争原理が織り成す幹細胞ダイナミクス~

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2022-12-15 京都大学

本田直樹 生命科学研究科特命教授(兼任:広島大学教授、生命創成探究センター客員教授)、中牟田旭 理学部学生、吉戸香奈 生命科学研究科大学院生らからなる研究グループは、腸や骨髄などの組織にある幹細胞が、成熟(分化)した細胞をどのような法則で絶えず供給しているのかを記述する統一理論を提唱し、実験データからその妥当性を示しました。

多細胞組織において幹細胞がどのように分化細胞を供給しているのでしょうか?そのメカニズムは生物学における長年の謎でした。数十年来の仮説は「組織の階層性」によるもので、少数の司令塔となる幹細胞がひとつずつ分化細胞を生み出すというものです。最近では、その対立仮説として、「幹細胞同士の中立的な競争」が重要であるというモデルが提唱されてきました。しかしながら、どちらのモデルが正しいのか決着がついていませんでした。

本研究では、これら二つのモデルが必ずしも相反するものではないことに注目し、これらを包括する数理モデルを提案しました。この数理モデルによって、一つの幹細胞から生じた細胞の数が一過的な増加と減少を繰り返す(細胞数のバースト)という“栄枯盛衰”的なふるまいが予言されました。そして、造血幹細胞の実験データを解析することで、実際の幹細胞が数理モデルからの予言に従っていることを確認し、本モデルの妥当性を示しました。本研究で提唱されたモデルは、組織の恒常性維持メカニズムの解明に貢献することが期待されます。また、がんや不妊などの幹細胞恒常性の異常により起こる疾患の、数理モデルを用いた統一的理解に発展することが期待されます。

本研究成果は、2022年11月18日に、「Communications Biology誌」に掲載されました。

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本研究グループが提案した数理モデルとシミュレーション結果の概要(模式図)

詳しい研究内容≫

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細胞遺伝子工学
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