2023-01-27 ワシントン大学セントルイス校
◆フェロモンの感知と生産は、異なる組織や細胞経路によって媒介されるため、新しい交尾フェロモンを進化させるには、フェロモンを感知する遺伝子と、それを生産する遺伝子の両方の協調的な進化が必要である。
◆ワシントン大学セントルイス校のイェフダ・ベン・シャハーが率いるiScience誌の新しい研究は、性フェロモンの生産と知覚に関する遺伝的指示の間の関連性を明らかにしたものである。この研究は、カリフォルニア大学リバーサイド校のJocelyn Millarと共同で行われました。
◆研究者らは、Gr8aと呼ばれる単一のタンパク質が、オスとメスのハエの異なる器官で発現し、交尾の意思決定において抑制的な役割を担っているようだと報告しています。この発見は、ハエが間違った相手との交尾から身を守るために行動上の障壁を設ける方法の一つを指し示している。
◆Ben-Shaharと彼のチームが行った実験の1つで、科学者達は、Gr8a受容体の変異体であるハエを取り、別の酢ハエ種からの入力を使って、それらを再構築しました。この実験では、別の種からGr8aを導入するだけで、その動物のフェロモン・プロファイル全体が変化することが示された。
◆化学受容体がシグナルの生成方法にどのような影響を及ぼすのか、科学者たちはまだ正確に突き止めてはいないが、フェロモンの量的・質的差異を引き起こすことは分かっている。そして、フェロモンのわずかな変化でも、近縁のハエが互いに魅力を感じなくなり、仲間を選ぶ行動を変化させるのに十分である可能性があるのだ。
◆近縁の種がどのように進化して交尾の行動障壁を維持するのかという問題は、さまざまな基礎および応用生物学研究分野に影響を及ぼすものである。
◆「我々が観察したところでは、単一の遺伝子の変異が、フェロモンとその受容体の機能的結合を維持したままフェロモン伝達系を進化させるための分子経路を提供している可能性があります」とBen-Shaharは語っています。”我々の研究は、新しい種が発生した時に、フェロモンシステムが急速に進化するための潜在的な道を明らかにしています。”
<関連情報>
- https://source.wustl.edu/2023/01/when-bugs-swipe-left/
- https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(22)02155-1
交尾フェロモンの生成と知覚を促進する多面的化学受容体 A pleiotropic chemoreceptor facilitates the production and perception of mating pheromones
Cassondra L. Vernier ,Nicole Leitner ,Kathleen M. Zelle ,Merrin Foltz,Sophia Dutton,Xitong Liang ,Sean Halloran,Jocelyn G. Millar,Yehuda Ben-Shahar
iScience Published:December 29, 2022
DOI:https://doi.org/10.1016/j.isci.2022.105882
Summary
Optimal mating decisions depend on the robust coupling of signal production and perception because independent changes in either could carry a fitness cost. However, since the perception and production of mating signals are often mediated by different tissues and cell types, the mechanisms that drive and maintain their coupling remain unknown for most animal species. Here, we show that in Drosophila, behavioral responses to, and the production of, a putative inhibitory mating pheromone are co-regulated by Gr8a, a member of the Gustatory receptor gene family. Specifically, through behavioral and pheromonal data, we found that Gr8a independently regulates the behavioral responses of males and females to a putative inhibitory pheromone, as well as its production in the fat body and oenocytes of males. Overall, these findings provide a relatively simple molecular explanation for how pleiotropic receptors maintain robust mating signaling systems at the population and species levels.
