2023-02-17 京都大学
結核などの慢性感染病態では、病原体と宿主免疫系の攻防の結果、マクロファージが同心円状に密に配置された球状の細胞集塊(肉芽腫)が形成されます。肉芽腫の内部には、炎症を抑える細胞が形成する特殊な環境が存在し、そのせいで異物や病原菌が長期間にわたって生存してしまいます。肉芽腫において炎症を抑える細胞が、どのようにして誘導されるのか、そのメカニズムは不明でした。水谷龍明 医生物学研究所助教、杉田昌彦 同教授の研究チームは、モルモット肉芽腫モデルを活用して、炎症抑制性M2マクロファージの肉芽腫分布を特定するとともに、S100A9分子を高発現する活性化好中球がM2マクロファージと隣接して存在することを発見しました。また、S100A9ノックアウトマウスを用いた分子細胞生物学実験を通して、好中球S100A9を介したM2マクロファージ誘導機序の解明に成功しました。今回の研究成果は、結核の病態形成の解明につながるだけでなく、がん性炎症の理解と制御に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2023年1月29日に、学術誌「iScience」にオンライン掲載されました。
本研究のイメージ図
肉芽腫深部における好中球の働き~抗炎症性M2マクロファージを誘導する好中球S100A9シグナル経路~
研究者情報
研究者名:水谷 龍明
研究者名:杉田 昌彦