RNA構造「G4」がストレス顆粒の核となる ~神経変性疾患の新しい治療標的の可能性~

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2023-02-25 熊本大学,科学技術振興機構

ポイント
  • RNA構造の1つである「グアニン四重鎖構造(G4)」が細胞のストレス顆粒の核となり、G4結合タンパク質と共にストレス顆粒の形成を制御することを明らかにしました。
  • ストレス顆粒の形成不全は神経細胞の機能低下や細胞死を引き起こすことを発見しました。
  • ストレス顆粒にG4が集積する機構を解明できれば、神経変性疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があります。

RNAの構造は、翻訳過程・メッセンジャーRNA(mRNA)の分解・炎症反応など多面的な生理的機能に関与します。特にグアニンが連続した配列は、「グアニン四重鎖構造(G4)」と呼ばれる4本鎖構造を形成することがあります。ヒト細胞の約2,300種類のmRNA中にはG4が約3,800ヵ所形成されることが予測されています。しかし、mRNA中に存在するG4の役割は未解明でした。

熊本大学 発生医学研究所 ゲノム神経学分野の塩田 倫史 教授、矢吹 悌 助教、朝光 世煌 研究員(現:理化学研究所 研究員)らは、G4がストレスに応答して細胞に形成される「ストレス顆粒」の核となり、その形成を制御することを見いだしました。また、ストレス顆粒の形成が妨げられると、神経細胞のストレス刺激による機能低下が促進されることを初めて発見しました。ストレス顆粒の形成は筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の発症と密接に関与することが指摘されています。ストレス顆粒にG4が集積する機構を解明できれば、神経変性疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があります。

本研究成果は、米国科学振興協会(AAAS)が発行する科学誌「Science Advances」に2023年2月24日(米国東部標準時)(日本時間2023年2月25日)にオンライン掲載されます。

本研究成果は、MEXT/JSPS科研費(JP20K15417、JP20J00520[朝光]、JP21K06579[矢吹]、22K19297、21H00207、20K21400、JP20H03393[塩田])、JST 戦略的創造研究推進事業 ACT‐X(JPMJAX2111[朝光])、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR2043[塩田])、日本医療研究開発機構(AMED) 難治性疾患実用化研究事業(JP20ek0109425[塩田])、アステラス病態代謝研究会[塩田]、熊本大学 国際先端研究拠点および熊本大学 発生医学研究所 高深度オミクス事業研究助成の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“RNA G-quadruplex organizes stress granule assembly through DNAPTP6 in neurons”
DOI:10.1126/sciadv.ade2035
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
塩田 倫史(シオダ ノリフミ)
熊本大学 発生医学研究所 教授

<JST事業に関すること>
中神 雄一(ナカガミ ユウイチ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 創発的研究支援事業推進室

宇佐見 健(ウサミ タケシ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ

<報道担当>
熊本大学 総務部 総務課 広報戦略室
科学技術振興機構 広報課

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