たんぱく質のアミノ酸残基選択的ラベル化を 可能とする光駆動型人工金属酵素の開発 ~働く環境の変化で潜在能力を引き出す~

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2023-03-17 東北大学,科学技術振興機構

ポイント
  • たんぱく質の内部空間に金属錯体を導入すること(人工酵素化)で人工金属酵素は構築されます。本研究では、金属錯体に潜在している光化学特性を人工酵素化によって引き出した光駆動型人工金属酵素の構築に成功しました。
  • たんぱく質内外で切り替わる金属錯体の光化学特性を利用し、本来競合しうるたんぱく質の2つのアミノ酸残基のラベル化を選択的に進行させることができました。
  • 光駆動型人工金属酵素のさらなる最適化によって、生命科学や創薬研究において重要な「生体分子の部位特異的な修飾法」の開発につながることが期待されます。

人類が開発してきた合成金属触媒と自然界で進化してきた生体触媒(酵素)の利点を組み合わせることを目的として人工金属酵素の研究が進められています。人工金属酵素は合成金属触媒(金属錯体)をたんぱく質の内部空間に導入することで構築されます。今回、東北大学 学際科学フロンティア研究所の岡本 泰典 助教、佐藤 伸一 助教、馬渕 拓也 助教らは、光駆動型人工金属酵素の開発に成功しました。

本研究の人工金属酵素を構成するルテニウム錯体は非発光性ですが、たんぱく質の内部空間に導入されることで発光するようになります。研究チームは、このルテニウム錯体の光化学特性の変化から、ルテニウム錯体単独と人工酵素化されたものでは異なる光触媒能を発揮すると予想しました。実験の結果、ルテニウム錯体単独では光駆動型の1電子移動反応を、人工酵素化されたものではエネルギー移動反応を優先的に進行させることを見いだしました。さらには、この反応タイプの切り替えをたんぱく質のアミノ酸残基の選択的ラベル化に応用しました。本成果は、生命科学や創薬研究で重要な技術である「生体分子の部位特異的なラベル化」に人工金属酵素が貢献できる可能性を示すものです。

本研究成果は、米国化学会の専門誌「ACS Catalysis」に2023年3月16日(米国時間)付で掲載予定で、同誌のSupplementary Coverにも選出されています。

本研究は、以下の支援を受けて実施されました。

• 科学技術振興機構(JST) ACT-X JPMJAX1913 研究領域:生命と化学「人工金属酵素による細胞内触媒反応系の開発(研究代表者:岡本 泰典)」
• 日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 JP20K15393、JP21H05118(研究代表者:岡本 泰典)
• 科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業 JPMJFR2005 阿部パネル「生物活性分子のプローブ化不要な結合タンパク質網羅的同定(研究代表者:佐藤 伸一)」
• 日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金 JP21H05503(研究代表者:佐藤 伸一)
• 科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業 JPMJFR212H井村パネル「ナノ空間反応性イオン輸送制御システムの創出(研究代表者:馬渕 拓哉)」
• 文部科学省世界で活躍できる研究者戦略育成事業「学際融合グローバル研究者育成東北イニシアティブ(TI-FRIS)」(岡本 泰典、馬渕 拓哉)

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Switching Type I/Type II Reactions by Turning a Photoredox Catalyst into a Photo-Driven Artificial Metalloenzyme”
DOI:10.1021/acscatal.2c05946
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
岡本 泰典(オカモト ヤスノリ)
東北大学 学際科学フロンティア研究所 助教

<JST事業に関すること>
宇佐見 健(ウサミ タケシ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ

<報道担当>
藤原 英明(フジワラ ヒデアキ)
東北大学 学際科学フロンティア研究所 特任准教授

科学技術振興機構 広報課

生物工学一般
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