2023-05-10 京都大学
世界中で性差による不平等が存在し、それが女性のメンタルヘルスの悪化や低学歴傾向に関連しています。
植野司 医学部附属病院特定病院助教、宮田淳 医学研究科講師、Nicolás Crossley チリカトリック大学助教、André Zugman アメリカ国立衛生研究所研究員を中心とする研究グループは、29カ国にわたる多施設共同研究により、18~40歳までの健康な男性3,798人と女性4,078人の実験参加者について、ジェンダー・ギャップ指数およびジェンダー不平等指数から算出した性別間の不平等の指標とMRIによる脳の構造画像との関連を解析しました。
18~40歳までの健康な男性3,798人と女性4,078人のMRIの脳の構造データを用いて、脳の皮質の厚さや表面積と性別間の不平等の指標の関係を調べ、右半球の皮質厚の男女差は性別間の不平等と関連が認められました。領域ごとの解析では、特に右前部帯状回で同じ関連を認めました。これは社会的・文化的な要因が脳の発達に影響すること、ひいては性別間の不平等を改善する政策が平等で公正な社会を実現するために求められることを示唆しています。
本研究成果は、2023年5月8日に、国際学術誌「The Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「脳に関わる研究をする上で、性差は常に考慮する必要があります。しかし、現在もつづく無意識でのバイアスによる性別間の格差、不平等がある環境の中で、作り上げられた『性差』も少なからず含まれているでしょう。個人が十分に活躍できる社会に向けて、性差を適切に理解することは重要だと考えています。本研究に参加し、国際的なデータを解析することで、この『性差』の中に実社会の男女格差と関連するものがあることを報告することができました。こうした報告から、性別間の格差・関りについて社会の中でも理解が広がり無意識のバイアスに気づき、変化していくことを期待しています。」
詳しい研究内容について
男女間の不平等と脳の性差―男女間の不平等は脳構造の性差と関連する―
研究者情報
研究者名:植野 司
研究者名:宮田 淳