ALSにおける運動障害の一因か。運動ニューロンのはたらき、過剰なTDP-43によって低下。

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2023-07-20 国立遺伝学研究所

身体を動かすことができなくなってしまう難病、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、以下、ALSと略す)では、筋肉を収縮させる神経細胞「運動ニューロン」の機能が失われることが知られています。ALSの運動ニューロンには、TDP-43(ティーディーピー 43)とよばれるタンパク質を含んだ凝集体が蓄積する、という特徴があります。TDP-43の凝集は、90%以上のALSにおいて認められますが、多くの場合TDP-43を産生する遺伝子(TARDBP遺伝子)に、変異がありません。この為、遺伝子変異によらずに生じるTDP-43の毒性のメカニズムを理解することが、重要な研究課題となっています。

浅川和秀特命准教授らは、カルシウムイメージングという技術を用いて、擬似運動中の熱帯魚ゼブラフィッシュの正常な運動ニューロンと、TDP-43を過剰に発現している運動ニューロンの神経活動を同時に計測して比較しました。その結果、TDP-43のタンパク質量が過剰になると、運動ニューロンの活動(神経興奮性)が低下することを発見しました(図)。

本研究によって、TDP-43のタンパク質量が変動することで運動ニューロンの機能が低下し、そのことがALSにおける運動障害の一因である可能性が示唆されました。

本研究の成果は、Development, Growth & Differentiation誌に2023年7月15日に掲載されました。本研究は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所(浅川和秀特命准教授、川上浩一教授)と、東京医科大学(半田宏特任教授)による共同研究グループによって実施されました。

本研究は、「生命の彩」ALS研究助成基金、加藤記念難病研究助成基金、第一三共生命科学研究振興財団、武田科学振興財団、科研費(JP16K07045、JP19K06933、JP22H02958、 JP23H04266、JP21H02463)、AMED-PRIME(JP23gm6410011h0003)、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の支援を受けて実施されました。

浅川和秀特命准教授は、ALSの克服に必要な重要問題を解決するための研究費のご寄附を、個人や企業の皆様方から広く募っています(ご寄付は、こちらから)。

Figure1

図:TDP-43の過剰発現は、運動ニューロンの神経興奮性を低下させる


Dysregulated TDP-43 proteostasis perturbs excitability of spinal motor neurons during brainstem-mediated fictive locomotion in zebrafish

Kazuhide Asakawa, Hiroshi Handa, Koichi Kawakami

Development, Growth & Differentiation 2023 July 15 DOI:10.1111/dgd.12879

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