2023-06-26 国立遺伝学研究所
生態遺伝学研究室の北野潤教授と吉田恒太特任助教は、Current Opinion in Genetics and Developmentのゲノムコンフリクト特集号に総説を発表しました。
雑種不稔や雑種致死などの内因性雑種不適合は、種間の生殖隔離機構のひとつとして重要です。性染色体を持つ生物では、内因性雑種不適合とくに雑種不稔は、ホールデイン則とラージX効果の2つの法則に従うことが多いと考えられています。この2つの法則を説明する仮説として、性染色体は減数分裂ドライブ因子などの利己的遺伝子の温床となりやすく、地理的に隔離された2集団で異なる減数分裂ドライブ因子が蓄積すると雑種異常を引き起こすという説が提唱されています。
この仮説はもっともらしく思われ、いくつかの経験的データもこの仮説と一致していますが、自然界での種分化、特に遺伝子流動を伴う種分化についても、このようなメカニズムで雑種異常が進化するのかについては、いまだに多くが不明です。そこで、性染色体の進化と種分化における減数分裂ドライブの役割を調べた最近二年間に発表された実証的研究をレビューしました。まだまだ野生生物でのデータ蓄積が必要であることが認識されました。
本成果は、科研費基盤S(22H04983)とJST・CREST(JPMJCR20S2)の支援を得て行われました。
Do sex-linked male meiotic drivers contribute to intrinsic hybrid incompatibilities? Recent empirical studies from flies and rodents
Kitano, J. and Yoshida, K.
Current Opinion in Genetics and Development (2023) 81, 102068 DOI:10.1016/j.gde.2023.102068