島皮質を含む脳梗塞の発症後に心房細動を検出された患者は塞栓症のリスクが低い

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2023-10-25 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)脳血管内科の徳永敬介医師(現白十字病院)、古賀政利部長、豊田一則副院長らの研究チームは、峰松一夫名誉院長が主任研究者を務めるRELAXED研究と豊田副院長が主任研究者を務めるSAMURAI-NVAF研究の統合解析によって、島皮質(大脳皮質の一領域で心臓の自律神経支配に関与しているとされる)を含む脳梗塞の発症後に心房細動を検出された患者は、塞栓症のリスクが低いことを明らかにしました。本研究の成果は2023年10月8日に米国神経学会が発行する医学雑誌「Annals of Neurology」オンライン版に掲載されました。
※脳梗塞、一過性脳虚血発作、全身性塞栓症など

■背景

心房細動は脳梗塞の最も重要な危険因子の一つですが、脳梗塞の発症前に心房細動と診断されたことがなかった患者の24%が脳梗塞の発症後新たに心房細動と診断されます。脳梗塞の発症後に検出された心房細動(AFDAS)には、以前から存在していた心房細動(KAF)の他にも脳梗塞を原因として新たに発症した心房細動が含まれており、そのような心房細動は持続時間が短く、塞栓症のリスクが低いと考えられています。そこで、徳永医師らの研究チームは、大脳皮質の一領域で心臓の自律神経支配に関与しているとされる島皮質を含む脳梗塞の発症後に心房細動を検出された患者は塞栓症のリスクが低いという仮説を立て、これを検証しました。

■研究方法

徳永医師らの研究チームは、国内18施設から心房細動を有する脳梗塞または一過性脳虚血発作患者1,192例を登録したSAMURAI-NVAF研究と、国内157施設からほぼ同様の基準で1,309例を登録したRELAXED研究から、来院時に頭部MRIを撮像された脳梗塞患者を対象とし、90日以内の塞栓症(脳梗塞、一過性脳虚血発作、全身性塞栓症)の発生率を調査しました。

■結果

対象となった1,548例のうち、AFDASと島皮質梗塞を有していたのは360例(AFDAS+I群)、AFDASを有していましたが島皮質梗塞を有していなかったのは409例(AFDAS-I群)、KAFと島皮質梗塞を有していたのは349例(KAF+I群)、KAFを有していましたが島皮質梗塞を有していなかったのは430例(KAF-I群)でした。90日時点での塞栓症の累積発生率はそれぞれ0.8%、3.5%、4.9%、3.3%でした。AFDAS+I群と比較し、AFDAS-I群(調整ハザード比5.04、95%信頼区間1.43-17.75)、KAF+I群(調整ハザード比6.18、95%信頼区間1.78-21.46)、KAF-I群(調整ハザード比5.26、95%信頼区間1.48-18.69)は塞栓症の発生率が有意に高いという結果でした。

■解説

本研究の結果から、AFDASと島皮質梗塞を有する患者は脳梗塞、一過性脳虚血発作、全身性塞栓症といった塞栓症のリスクが低いということが示されました。AFDASの病態生理にはまだ不明な点が多いため、今後さらなる症例の蓄積と検証が必要と考えられます。

■発表論文情報

著者: Keisuke Tokunaga, Kazunori Toyoda, Shunsuke Kimura, Kazuo Minematsu, Masahiro Yasaka, Yasushi Okada, Sohei Yoshimura, Masatoshi Koga
題名: Association of the timing of atrial fibrillation detection and insular involvement with the risk of embolic events after acute ischemic stroke
掲載誌: Annals of Neurology

■謝辞

本研究は、SAMURAI-NVAF研究は厚生労働科学研究費(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業H23-010)からの研究助成を、RELAXED研究はバイエル薬品株式会社からの研究助成を受け、循環器病研究振興財団から委託されて行われました。

(図1) 各群における塞栓症の累積発生率

【報道機関からの問い合わせ先】

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室

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