一人ひとりのこころの状態に合わせるメンタルヘルスサポートを開始へ

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アプリを使ったコロナ禍のこころの遠隔評価・相談

2021-04-21 国立精神・神経医療研究センター,日本医療研究開発機構

ポイント

  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、「COVID-19等による社会変動下に即した応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアの基盤システム構築と実用化促進にむけた効果検証」を首都圏の複数個所、愛知県新城市の特定の市区で2021年4月21日より開始します。
  • 本研究では、コロナ禍でのメンタルヘルスをサポートする非接触型のシステムを構築し、一人ひとりのこころの状態に合わせて、ケアを提供することを目的とします。
  • こころの状態に応じて必要なケアのレベルを見極めてトリアージするために、AI(Artificial Intelligence)を用いて、重症度分析アルゴリズムを開発し、トリアージの精度を高めます。
  • 軽症~中等症の方には、AIを活用したチャットボットによる認知行動療法アプリ、重症以上の方には、トレーニングを受けた心理士がオンライン相談に対応します。

研究の背景

COVID-19によるパンデミック以前からメンタルヘルスサービスへのアクセスは、偏見等が障壁となって不十分なものでした。さらに、パンデミック後には、感染予防対策のため医療機関や介護施設におけるサービスが制限され、利用者も対人接触による感染リスクのためにアクセスを差し控える傾向が強まっています。一方、感染する恐れや、他人との接触を避けて自宅に閉じこもりがちな生活を余儀なくされるなど通常の生活習慣が失われ、さらには職場の倒産、失業への恐怖などから、多くの国民は強いストレスに曝されています。また、一部の感染者や医療関係者は、いわれのない偏見や非難に晒され、こころが疲弊する状況が続いています。自殺者も2019年度と比べて2020年度は増えており、とくに女性ではその傾向が強いことが報告されています。
COVID-19に関するこころのケアについては、精神保健福祉センター等で対応することが求められていますが、電話相談の件数は増え、職員の負担は増すばかりです。すなわち、メンタルヘルスサービスへのニーズが高まっているにも関わらず、メンタルヘルスサービスへのアクセスを困難にする条件が重なっている状況であり、その解決は喫緊の課題となっています。

研究の概要

(1)目的
本研究の目的は、上記を解決するために、メンタルヘルスサービスを必要とする市民が適切な対応を受けられるようなシステムづくりを行うことです。
本研究成果が特定の自治体だけでなく、わが国の多様な地域で適用可能なように、首都圏の複数個所(小平市、所沢市、三鷹市、武蔵野市、世田谷区、新宿区)の他、愛知県新城市で展開されている包括的なヘルスケアシステムに本研究を組み込み、地域特性による違いが認められるかを検証します。
(2)システムのフロー
まず、メンタルヘルス不調を自覚した住民がスマートフォン等からアクセスできる窓口となるWEBサイト(KOKOROBO)を作成しました(図1)。フロントページでは、“癒しの森へ、ようこそ”と住民を迎え入れ、すぐに “つらさと支障の寒暖計”を用いてこころの状態のチェックに進むか、関連サイトで情報を探索するか、あるいはメンタルヘルスに関する知識を習得できるクイズ形式の“こころのQ&A”に挑戦することが選択できます。
“こころをチェックしてみる”をクリックすると、“つらさと支障の寒暖計”の2問が提示され、その回答結果に基づいて、詳細な評価に進むかどうかが決まります。WEBサイトにアクセスした住民には、本研究の目的、内容について説明文を提示し、eIC(electronic Informed Consent)*1による同意を得ます。同意が得られない場合は、本システムの使用は任意としますが、そこで得られたデータは解析には使用しません。

図1 WEBサイトのフロントページ

WEBサイトでは、うつ、不安、睡眠に関する自記式質問票への回答を基にトリアージします。メンタルヘルスの重症度にしたがって、①対応終了(~軽症)、②「こころコンディショナー」というAI(Artificial Intelligence)を用いたチャットボット形式の認知行動療法プログラムを活用(軽症・中等症)、③心理士によるオンライン相談を受ける(重症以上)群に分類されます。①、②に振り分けられた住民には、1か月後にスマートフォン等を介して、うつ、不安、睡眠に関する再評価を行い、改めてトリアージを行います。また、うつ、不安、睡眠の評価に基本情報(年齢、性別、居住状況、就学・就労状況、授業・勤務形態等)も合わせて、再評価の結果を機械学習に適用して、メンタルヘルス重症度分析アルゴリズムを作成し、自動トリアージシステムの構築を行います。③の心理士は、認知行動療法の心理的介入手法を取り入れた最新のPFA(Psychological First Aid)*2についての研修を受講します。研修を受講した心理士は、遠隔医療システムを用いて住民のこころのケアを行い、重症度によって、地域医療機関あるいは高度専門医療機関に紹介します。なお、①、②に振り分けられた住民に関しては、重症度が軽症未満を2回連続するまで、あるいはオンライン相談を受けるまで、毎月フォローアップを行います(図2)。

図2 応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアのフロー

今後の展望

本研究事業の成否に関しては、①本システムのトリアージ結果にしたがって行動した場合に、ベースラインから1か月後にかけての不安、うつ、不眠に関する指標がいかに改善したか(トリアージの予測精度)、②どれくらいの割合の人が本システムのトリアージ結果にしたがって行動したか(遵守率)、③本システムを使用した相談者の満足度(満足度)、④本システムによって医療機関での適切な受療につながったか(受療率)、を基に評価されます。これらの評価に基づいて一定の成果が上がったことを確認してから、全国への実用化を促進することを想定していますが、ICT環境整備、相談員業務などの負担をどうするか、といった課題も残されています。
一方、本システムは、COVID-19拡大の中で発生したニーズに応えるために作成されたものですが、COVID-19が終息した後も、メンタルヘルスに関する問題で悩んでいる人々を必要とする対応法へと円滑に導くツールとして、さらに進化・発展することが期待されます。

用語の説明

*1 electronic Informed Consent (eIC):
試験概容の説明や同意取得にマルチメディアを用いる電子的な説明同意取得の手法及びその技術

*2 Psychological First Aid (PFA):
心理的応急措置。支援者が被災者や犯罪の被害を受けた方などと関わるとき、どのように声をかけ、何に気をつけて接したらよいかに関する心理的支援法。通常のPFAは非専門家により提供されるが、Rapid PFAはジョンズホプキンス大学により開発された心理的応急処置介入方法で、精神保健分野の専門家が提供するために使用される

研究経費

なお、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)研究開発課題「COVID-19等による社会変動化に即した応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアの基盤システム構築と実用化促進にむけた効果検証」の支援を受けて行われています。

お問い合わせ先

【研究に関するお問い合わせ】
<研究代表者>
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
理事長 中込和幸
〒187-8551東京都小平市小川東町4-1-1  TEL:042-341-2712(内線)2104
<事務局>
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
第一精神診療部 部長 鬼頭伸輔、医長 藤井猛

【報道に関するお問い合わせ】
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター総務課 広報係

【AMED事業に関して】
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
ゲノム・データ基盤事業部 医療技術研究開発課

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