慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術後の再発性肺高血圧症は稀で予後は良好である

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2024-05-08 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)肺循環科 髙野凌医師、青木竜男医師、大郷剛特任部長らは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術後の治療血管の再狭窄・閉塞による症候性再発性肺高血圧症は非常に稀で、再発性肺高血圧症のほとんどは軽度の悪化のみで予後は良好であったことを明らかにしました。この研究は、国際心臓肺移植学会の機関誌「The journal of Heart and Lung Transplantation」に2024年5月6日に掲載されました。

■背景

慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)は、器質化した血栓による慢性的な肺動脈狭窄または閉塞を原因とした肺高血圧症(*)です。バルーン肺動脈形成術は、末梢型のCTEPHや患者さんにとって手術がハイリスクであるために肺動脈内膜摘除術が困難なCTEPH症例において血行動態や運動耐容能を改善させ、治療後の長期予後が良好であることが知られています。一方で、治療後の再発については明らかにされていませんでした。

■研究手法

2009年〜2020年にかけて国立循環器病研究センターで肺動脈内膜摘除術が困難なCTEPHに対してバルーン肺動脈形成術を施行された262例を調査しました。バルーン肺動脈形成術後の初回のカテーテル検査で肺高血圧症が正常化(平均肺動脈圧<25mmHg)したものの、フォローアップのカテーテル検査で肺高血圧症の再発(平均肺動脈圧≧25mmHg)があり、バルーン肺動脈形成術または肺血管拡張薬での追加治療を要した患者を再発群として、再発群と非再発群を比較しました。

■成果

158例が解析対象となり、そのうち11例が再発群に該当しました。5年時点での再発の状態占有確率は9.0% (95%CI:5.0-18.9%)でした(図1)。再発群の患者のうち1例は血行動態と運動耐用能の著明な悪化を認め、肺動脈造影検査では以前治療した肺動脈の再狭窄・閉塞病変を認めました。一方で、再発群のその他の10例では血行動態や運動耐容能の悪化は軽度で、肺動脈造影検査で残存狭窄・閉塞病変はあるものの新規病変や再狭窄・閉塞病変は認めませんでした。さらにバルーン肺動脈形成術または肺血管拡張薬による追加治療により再発群も非再発群と同等の血行動態へ改善し、その予後は良好でした。

■今後の展望と課題

本研究により、CTEPHに対するバルーン肺動脈形成術後の治療血管の再狭窄・閉塞による症候性再発性肺高血圧症は非常に稀で、再発性肺高血圧症のほとんどは軽度の悪化のみで予後は良好であったことが示されました。今後は、再発性肺高血圧症を適切に抽出するためのフォローアップ方法と適切な治療介入方法の検討が必要と考えられます。

注釈

(*) 肺動脈という心臓から出ている肺に血液を送るための血管の脈の流れが悪くなることで、心臓と肺に機能障害が起こる病気です。

■発表論文情報

著者:Ryo Takano, Tatsuo Aoki, Ryotaro Asano, Jin Ueda, Akihiro Tsuji, Katsuhiro Omae, Takeshi Ogo
題名:Recurrent Pulmonary Hypertension After Balloon Pulmonary Angioplasty for Inoperable Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension
掲載誌:The journal of Heart and Lung Transplantation

【報道機関からの問い合わせ先】

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室

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